東京大学は、大規模なレセプトデータを用いた研究から、酸分泌抑制薬の1種PCABの長期内服が、ピロリ菌除菌後に発症する胃がんのリスクを高めることを明らかにした。
東京大学は2024年2月15日、大規模なレセプトデータを用いた研究から、酸分泌抑制薬の1種PCAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)の長期内服が、ピロリ菌除菌後に発症する胃がんのリスクを高めることを明らかにしたと発表した。朝日生命成人病研究所との共同研究による成果となる。
強い酸分泌抑制作用を持つPCABは、世界に先駆けて日本で発売、使用されている胃酸分泌抑制剤だ。胃酸を抑制するほか、逆流性食道炎の治療にも有効とされる。
今回の研究では、PCABの1種であるボノプラザンに着目。1000万人以上の大規模レセプトデータから抽出した約5万4000人のピロリ菌除去後の患者集団において、PCAB内服患者の胃がん発症リスクを解析した。胃がん発症リスクは、胃がんリスクと関連しないとされるH2RA(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)内服群と、ピロリ菌除菌後の胃がん発生との関連が報告されているPPI(プロトンポンプ阻害薬)内服群を比較した。
解析の結果、PCAB内服群はH2RA内服群に比べ、除菌後の胃がん発症リスクが有意に上昇しており、PCABの用量、内服期間依存性も確認された。一方、PCAB内服群とPPI内服群を比較すると、除菌後の胃がん発症リスクは同等だった。
胃がんは、ヘリコバクター・ピロリ菌の慢性感染が主原因とされる。そのため、ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生を一定程度予防できるが、除去後も胃がんを発生することがある。
今回の研究により、PPIと同様にPCABもピロリ菌除去後の胃がん発症に関連することが示された。このことから、ピロリ菌除去後の患者に対する酸分泌抑制薬の処方、内服期間、内視鏡検査間隔の適正化が必要になる可能性が示された。
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