大日本印刷は、両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させる「DNP太陽光発電所用反射シート」の提供を開始すると発表した。
大日本印刷(DNP)は2024年3月5日、両面採光型太陽電池モジュールの発電量を向上させる「DNP太陽光発電所用反射シート」の提供を開始すると発表した。同製品は、両面で光を受けて発電するタイプの太陽電池モジュールが設置された発電所の地面に敷設するシートだ。太陽光の反射能(アルベド)を向上させることでモジュールの裏面に入射する光を増加させて発電量を高める効果がある。
同社は、2020年から北海道旭川市の太陽光発電所で同製品の実証実験を行っており、このシートの効果によって、発電量が約6%向上することを確認している。敷設から3年が経過した現在でもその性能を維持していることも分かっている。
DNP太陽光発電所用反射シートは、太陽電池の発電領域である光の波長400nm〜1200nmに対して、85%以上の高い反射率を有す。光の散乱効果が高いので、幅広い太陽の角度に対応可能だ。シート内には金属層を含んでいないため太陽光で熱くならず安心して使える。さらに、織物や不織布とは異なり、この製品の表面は平滑であるため、土や泥などの汚れの付着が少なく、防汚性にも優れている。これにより長期間シートの反射率を低下させることなく、発電量の継続的な向上が期待できる。
太陽電池モジュールの信頼性評価に用いられている耐高温/高湿試験、耐候性試験で、屋外で10年相当が経過しても反射率に変化はなく、発電量向上効果が維持可能なことも判明している。機械的強度の劣化もないことから長期にわたり高い耐風性を維持する。
同製品は、植物が光合成に利用する光の波長の90%以上を遮ることができるため、シートを敷いた地面への光の透過を抑制して、植物の育成を防げる。これにより、除草作業の負荷の軽減につながる。
今後DNPは、両面採光型太陽電池モジュールの導入を検討している発電事業者や、太陽光発電所の設計、調達、建設を手掛けるEPC(Engineering/Procurement/Construction)事業者、運用/メンテナンスなどを手掛けるO&M(Operation & Maintenance)事業者などに同製品を提供し、2025年度までに累計50億円の売上高を目指す。
日本政府は2012年に、再生可能エネルギーの普及/発展を目指して、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を一定の価格で一定期間にわたり電力会社が買い取るFIT(Feed-in Tariff、固定価格買取)制度を開始した。
この制度の適用期間は、容量10kW未満の太陽光発電で10年間、それ以上の容量では20年間となっている。運転開始から約10年が経過した発電所が増え、主要部品の交換を含めた関連機器の更新も増加する中、新たに両面採光型太陽電池モジュールなどを導入して発電量を増やす「リパワリング」のニーズが高まっている。
こうしたニーズに対してDNPは今回、高い耐久性と信頼性を備えた太陽電池モジュール向けのバックシートや封止材を提供してきた実績を生かし、DNP太陽光発電所用反射シートの提供を開始する。
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