本連載第46回でカナダのケベック州のAIハブ都市であるモントリオールを取り上げ、第94回ではカナダ当局の生成AI法規制動向を取り上げた。今回は、カナダにおける生成AIイノベーションを巡るデータセキュリティ、プライバシー、サステナビリティなどのガバナンス動向に焦点を当てる。
本連載第46回でカナダのケベック州のAI(人工知能)ハブ都市であるモントリオールを取り上げ、第94回では、カナダ当局の生成AI法規制動向を取り上げた。今回は、生成AIイノベーションを巡るデータセキュリティ、プライバシー、サステナビリティなどのガバナンス動向に焦点を当てる。
2023年11月22日、Microsoftは、今後2年間、総額5億米ドルをカナダのケベック州に投資して、現行のデジタルインフラストラクチャフットプリントを拡張し、大規模なクラウドコンピューティングおよびAI向けのインフラストラクチャを構築すると発表した(関連情報)。Microsoftは、2016年、ケベック州に大規模クラウドデータセンターを開設し、事業を拡大するとともに、デジタルヘルス、AI、サイバーセキュリティといった新規技術開発を支えるICT基盤を提供してきた。今後は、2030年までに「Carbon negative」「Water positive」「Zero waste」を達成するというMicrosoftのサステナビリティ目標に向けて、環境に配慮した持続可能性のあるデジタルインフラストラクチャの構築を進めるという。
再生可能エネルギー発電比率約99%のケベック州には、AWS(関連情報)、Google Cloud(関連情報)、Oracle(関連情報)など、大手プラットフォーム事業者のデータセンターが集積している。加えて、Meta/Facebookが、AIの基礎研究センターをモントリオールに開設/運営する(関連情報)など、ケベック州は、グローバルなAIハブ機能も担っている。
ケベック州だけでなく、オンタリオ州、ブリティッシュコロンビア州、アルバータ州など、カナダ各地で、同様のAIプラットフォーム強化の動きが拡大しており、MedTech/HealthTech/DeepTechのスタートアップ企業にとっても追い風となっている。
2023年7月14日、カナダ連邦政府傘下のカナダ・サイバーセキュリティ・センターは、「生成人工知能(AI) -ITSAP.00.041」と題するセキュリティガイダンスを公表した(関連情報)。
本ガイダンスでは、生成AIについて、モデルに注入された大規模データセットからのデータモデリング機能により新たなコンテンツを生成するAIのタイプの1つと定義している。伝統的なAIシステムが、パターンを認識したり、既存のコンテンツを分類したりできるのに対して、生成AIはテキスト、画像、音声、ソフトウェアコードなどさまざまな形態で新たなコンテンツを創る出すことができる点を特徴としている。
そして、生成AIの活用領域として、医療を筆頭に以下の7領域を挙げている。
これらのように潜在的な市場機会を示した上で、表1に示す通り生成AIのセキュリティリスクを挙げている。
生成AIのリスクを最小化するために、組織は表2に示すような対策をとることができるとしている。
他方、個人に対しては、以下のような対策をとることができるとしている。
本ガイダンスでは、最後に、表3に示すような生成AIツール利用時のセキュリティ保護策を提示している。
なおカナダ・サイバーセキュリティ・センターは、2023年11月26日に米国サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)と英国国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)が共同で発表した「セキュアなAIシステム開発向けガイドライン」(関連情報)に参画しており、翌27日には、同ガイドラインをカナダ国内向けに公表している(関連情報)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.