本連載で取り上げたカナダは、医療AIのリード役も担っている。今回は、ケベック州モントリオールの最新動向を紹介しよう。
本連載第43回で取り上げたカナダは、医療AI(人工知能)のリード役も担っている。今回は、ケベック州モントリオールの最新動向を紹介する。
2019年4月10〜11日、カナダ東部ケベック州のモントリオールで、「World AI Summit Americas 2019」(関連情報)が開催され、深層学習研究の第一人者として知られるモントリオール大学のヨシュア・ベンジオ氏、AI創薬スタートアップ企業インシトロ(Insitro)を立ち上げたスタンフォード大学出身のダフニー・コラー氏など、世界のAIイノベーションをけん引する顔ぶれがそろった。
モントリオールは、オンタリオ州のトロントと並び、世界をリードするAI研究の中心地として認知されつつあるが、一方では、Medtechに代表される健康医療イノベーションのクラスターも集積している。ここからは、モントリオールを代表する3つのMedtechクラスターを取り上げ、個々の背景や特徴、そこから生まれたスタートアップ企業の事例を紹介しながら、AIへの取り組みを俯瞰する。
CENTECH(関連情報)は、1996年、ケベック高等科学大学(ETS)により創設されたテクノロジーイノベーション推進組織であり、ビジネスパートナーには、BCFビジネスロー(法律)、BrandBourg(マーケティング)、デロイト(会計・コンサルティング)、Takdesign(産業デザイン)、カナダ・ナショナル銀行(金融)、Fundica(金融)、Futurpreneur Canada(スタートアップ支援)、ウルトエレトロニクス(製造)、マスワークス(ソフトウェア)、Planning Media(デジタル広告)、OVH(クラウドサービス)などが名を連ねている。
CENTECHは、Medtech(関連情報)、AI(関連情報)、スマートシティー(関連情報)などの領域で、スタートアップ企業向けアクセラレーションプログラムを提供している。図1は、CENTECHのスタートアップ企業支援機能を示しており、コーチング/メンタリング、ラボへのアクセス、洗練された機器、資金調達支援、オープンで保証された作業空間、外部専門家ネットワークなどを提供している。
特にMedtechの領域では、2018年7月24日、モントリオール市内にあるマギル大学医学部とCENTECHが連携して、共同コホートを設置することを発表している(関連情報)。マギル大学内にも、シムノベーション・ハブ(関連情報)、マギル・ドブソン・センター・フォー・アントレプレナーシップ(関連情報)、イノベーション+パートナーシップ(I+P)オフィス(関連情報)といったイノベーション推進組織があり、大学や研究領域の枠を超えたスタートアップ企業支援活動が展開されている。
参考までに表1は、CENTECH関連のMedtechスタートアップ企業事例を示している。医工連携をベースにした医療IoT(モノのインターネット))機器、統合型プラットフォームに加え、AI/機械学習を利用したソフトウェア・アズ・ア・メディカル・デバイス(SaMD)などの新製品、サービスが登場している。
企業名 | ソリューション概要 | 企業URL |
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Airfred Health | AI/機械学習を利用して、メンタルヘルスにおける治療の有効性を向上させる医師-患者間アプリケーションを開発・提供 | https://aifredhealth.com/ |
Corstem | AI/機械学習を利用した自動心臓画像解析・意思決定支援アプリケーションを開発・提供 | https://corstem.ai/ |
360Medlink | 患者サポート業務を支援するバーチャル・ナース・プラットフォームや、ライフサイエンス企業向け臨床試験プラットフォームなどを開発・提供 | https://360medlink.com/ |
NeuroServo | ウェアラブル簡易型脳波測定機器を開発・提供 | https://www.neuroservo.com/ |
表1 CENTECH関連Medtechスタートアップ企業の事例 出典:ヘルスケアクラウド研究会作成(2019年4月) |
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