本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」で注目を集めるプロジェクトを取り上げて、新製品の企画から開発、販売に必要なエッセンスをお伝えする。第1回はミューシグナルのポータブルDJシステム「FJ1」開発の裏側を紹介したい。
市場環境が変わる中、B2B事業で培った技術を生かして新たにB2C製品を作るモノづくり企業が増えている。大きなチャンスだが、今までと異なる機軸で新製品を作る上では大変な苦労もあるだろう。本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」のプロジェクトをピックアップし、B2C製品の企画から開発、販売に至るまでのストーリーをお伝えしたい。
「FJ1」は、宮城県仙台市のデジタルオーディオ機器開発会社のミューシグナルが開発した、オールインワンのポータブルDJデバイスだ。通常、DJプレイには2台のターンテーブル、ミキサー、エフェクターやサンプラーなどさまざまな機材を用意する必要があるが、FJ1はA4サイズというコンパクトな筐体にDJプレイに必要な全ての機能を搭載しており、音楽ファイルを入れたUSBメモリをポートに差し込むだけですぐにプレイをスタートできる。本格的なスピーカーも内蔵しているため、PCやスマートフォンなども不要で、ホームパーティーからクラブでのプレイまで、どんなシーンにもこれ1台で対応できる。
FJ1は2012年に誕生した初代「GODJ(ゴーディジェイ)」、2017年にGODJにビルトインスピーカーとハードウェアインタフェースを追加して発売された「GODJ Plus(ゴーディジェイ プラス)」の後継機だ。バッテリー駆動やスピーカー搭載といったGODJ Plusの使い勝手はそのままに、課題点を見直しさらなる進化を遂げた。このFJ1の開発背景や今後の展開について、ミューシグナルの代表取締役である宮崎晃一郎氏に話を聞いた。
――FJ1について、前機のGODJ Plusと比べて進化した点を教えてください。
宮崎晃一郎氏(宮崎氏) 一番のポイントが液晶の美しさです。これまでのGODJシリーズは液晶部分に、縦横比4:3の小型の液晶を2枚採用していました。デジカメのバックモニターにも使われていた製品を使用したため、解像度やコントラストに難があり、晴天の屋外では液晶が見えにくいという弱点がありました。
今回、FJ1には横長のタッチパネル式液晶を搭載しました。実はこの液晶は、自動車のルームミラーに使われている製品を転用したのですが、採用によって明るさもコントラストも格段に向上し、表示領域も1.5倍になりました。今後はこの液晶を生かし、波形表示などさまざまな新機能を盛り込んでいく予定です。
製品の薄さにもこだわりました。ひと目で「カッコいい」「見せたい」「自慢したい」という印象を持っていただくために、Apple製品のような高級感やエレガントさをデザイン面から追求しています。その実現のために、筐体を従来のプラスチック射出成形からアルミニウムの折り曲げ工法に変更しています。
3枚のアルミ板を折り紙のように折り曲げてネジ止めをすることで構造を簡略化し、内部のスピーカーやバッテリーの配置を見直すことで、無駄な空間が1mmもないほどスペースを切り詰めることができました。アルミの耐久性を上げるために「アルマイト(陽極酸化皮膜処理)」を施しているのですが、結果的に耐久性の向上だけでなく高級感のある仕上がりにもつながりました。
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