ドラレコ映像を意義ある規模のビッグデータに、特許技術で分散管理モビリティサービス

NTTコミュニケーションズは、タクシーなど街中を走るモビリティから映像データを効率的に収集して利活用するプラットフォーム「モビスキャ」の提供を2024年度上期から開始する。

» 2024年01月16日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 NTTコミュニケーションズは2024年1月12日、タクシーなど街中を走るモビリティから映像データを効率的に収集して利活用するプラットフォーム「モビスキャ」の提供を2024年度上期から開始すると発表した。また、モビスキャを使った「AI道路工事検知ソリューション」も同時に提供を開始予定だ。2027年度にはサービス収益30億円を目指す。

 街中の映像データは、効率的に収集/蓄積することでインフラ保全や災害対策、渋滞の解消、環境衛生保全などにつなげることができる。ただ、課題解決に役立つビッグデータとして活用できるほどの膨大な映像データを個社で取り扱うことは、リソースやコストの面で難しい。

 新サービスのモビスキャは、ドライブレコーダーから取得した映像を効率的に蓄積する映像分散管理プラットフォームだ。モビスキャ向けのデータ通信に対応したドライブレコーダーを、NTTコミュニケーションズからデータ収集に協力する企業(モビリティパートナー)に貸与する。

 モビリティパートナーは現状ではタクシー会社やバス会社、物流会社、ごみ収集事業者などを想定しており、ドライブレコーダーを搭載して従来通りに運行させることで映像データを集める。収集した映像に含まれる人物の顔など個人情報に対してNTTコミュニケーションズがマスク処理など保護処理を施して蓄積し、映像データを活用したいユーザー企業に提供する。

モビスキャの概要[クリックで拡大] 出所:NTTコミュニケーションズ

 モビスキャの使用例として最初に提供を開始するのが、AI道路工事検知ソリューションだ。ガスや電気、通信などのインフラ事業者は、設備が埋設されている道路上で事前に把握できていない工事が行われていないか、日々パトロールを行っている。埋設された設備の破損を防ぐためだが、パトロールのための人件費やパトロールを行う社用車の燃料コスト、維持費などが負担になっている。パトロールする作業者の確保も難しくなっている。そこで、モビスキャを活用して実際に街中を走行して目視で確認していた作業を代替する。

 AI道路工事検知ソリューションでは、工事現場に置かれるコーン標識(パイロン)をドライブレコーダー側のエッジAIで検知し、検知時点から前後5秒間の映像をサーバに送信する。サーバでは受け取った映像をAIで再度解析し、工事看板やコーンバーなど工事現場であることが分かる情報を基に映像をスコア化し、一定のスコアを超えた映像をソリューションのユーザー企業に提供する。ユーザー企業は、マップから1クリックで工事箇所の映像を確認できる。工事が始まっていなくても、コーン標識が検知された位置情報を把握しておくことで後日改めて映像を収集する指示を出すことが可能だ。

工事現場の可能性がある場所を検知する様子[クリックで拡大] 出所:NTTコミュニケーションズ

 AI道路工事検知ソリューションに関する実証実験を、岡山県と愛知県で2024年6月まで実施する。岡山エリアでは、モビリティパートナーとして岡山電気軌道と岡山交通が、映像データを活用するユーザー企業として岡山ガスが参加。愛知エリアでは、名鉄タクシーホールディングスと佐川急便がモビリティパートナーとなり、データは東邦ガスネットワークで利用する。

 技術パートナーとして、JVCケンウッドと両備システムズも参加している。JVCケンウッドがエッジAIを搭載したドライブレコーダーを、両備システムズが工事現場の情報を示す可視化ツールを提供した。

管理画面のイメージ[クリックで拡大] 出所:NTTコミュニケーションズ
AI道路工事検知ソリューションの提供の流れ[クリックで拡大] 出所:NTTコミュニケーションズ

特許技術で分散管理

 モビスキャでは、地域内を走る複数のモビリティパートナーから映像データを収集することで、より網羅的で高品質なデータを活用できるようにする。ただ、映像データを収集した場所が重複することも考えられる。

 モビスキャは、特許取得済みの技術を活用して映像データの分散管理を行う。1つ目の特許技術は、最良の映像を選別して保存する機能だ。ドライブレコーダーを搭載した複数の車両から同じ場所の映像データを受け取った際に、時間帯や他のデータ収集地点との距離、気象庁の天候データなどを基に最適なデータを選んで保存する。

 もう1つの特許技術は、全てのデータをサーバに上げないための分散データ保存だ。ドライブレコーダー側のエッジAIの物体検知判定で不要と判断された映像データもドライブレコーダーのSDカードに保存し、一定期間保持する。サーバではSDカードに保持されている映像のサマリー情報を一覧で管理し、期間内にモビスキャのユーザー企業から新たな要求やニーズが出てきた場合にはデータを提供できるようにする。

 映像ビッグデータの利活用には複数の課題があるという。データを誰がどのように収集するのか、不要なデータと重要なデータをどのように分別するか、プライバシーをどのように保護するか、大容量のデータストレージを維持/管理するコストをどのように低減するのか……といった点が現状ではハードルとなっている。

 NTTコミュニケーションズが映像ビッグデータに取り組むのは、ドコモグループが持っているモバイル回線を活用できることや、企業の顧客基盤を生かせることが強みになるという理由もある。

今後の展開

 今後はモビスキャを活用したい企業との協業により、さまざまなソリューションや新たなユースケースを検討する。インフラの破損検知だけでなく、混雑状況の把握や防災、開花状況の観測など、幅広い用途での情報提供を行いたい考えだ。

 また、モビスキャのドライブレコーダーを搭載できる車両を持つモビリティパートナーや、技術パートナーなど、さまざまな企業や団体との連携も加速し、ビッグデータの質を向上させる。現状ではモビリティパートナーの企業に謝礼を渡して企業で装着した既存のドライブレコーダーに加えてモビスキャ専用のドライブレコーダーも搭載してもらっているが、モビスキャ用のドライブレコーダーを運行管理や運転支援、地域の見守りなどにも使っていくことで搭載するメリットを打ち出す。

 今後は5Gなどを活用したリアルタイム性の向上の他、自動車やドライブレコーダー以外のドローンなどのモビリティや個人の端末などで取得した映像の収集も目指す。データのリアルタイム性を追求するとデータの通信コストやデータを蓄積する維持管理費が膨大になるため、情報提供サービスとのバランスをとることが課題となる。

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