2023国際ロボット展 特集

機能安全対応の無線非常停止やAGVのAMR化など、“痒い所”を突くパナソニックAD2023国際ロボット展

パナソニック アドバンストテクノロジーは「2023国際ロボット展」のパナソニックグループブースにおいて、機能安全対応の無線非常停止デバイスや、自律移動ロボット(AMR)向けソフトウェアパッケージなど、ロボット開発において“痒い所に手が届く”技術や製品、サービスなどを出展した。

» 2023年12月20日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック アドバンストテクノロジーは「2023国際ロボット展」(2023年11月29日〜12月2日、東京ビッグサイト)のパナソニックグループブースにおいて、機能安全対応の無線非常停止デバイスや、自律移動ロボット(AMR)向けソフトウェアパッケージなど、ロボット開発において“痒い所に手が届く”技術や製品、サービスなどを出展した。

 パナソニック アドバンストテクノロジーはパナソニックのソフトウェア開発会社として複数の研究開発部門などを統合する形で生まれ、デジタル家電のソフトウェアやシステム開発などを行ってきた企業だ。現在は、パナソニックグループの技術開発の中核部門として最先端のイノベーション技術の実装や、難易度の高い製品開発などを進めている。その中でここ最近、力を入れているのがロボット分野である。

無線で非常停止が行える機能安全対応デバイス

 iREX2023ではこうした技術力を生かしつつ、ロボットの開発や活用において“隙間”となっていたところを埋めるような、独自の製品群、技術群を紹介した。

 その1つが、機能安全対応の無線非常停止デバイスである「@seguro wes(アットセグロウェス)」だ。@seguro wesは、遠隔からの非常停止を実現する小型の無線デバイスだ。ボタンを押すだけで、遠隔から機器や装置を確実に停止させられる。機能安全規格「ISO 13849-1 PL d」に対応しており、安全性が求められる産業分野での利用を可能としている。無線通信の途絶監視、電源監視、CPU診断などの診断機能により、故障が発生しても危険を未然に防ぐことができる。無線は混信が少なく障害物に強い920MHz帯を使用し、無線受信機とリモコンを1対1でつなぐ。遅延についても「250msくらいまでには抑えられる。その遅延で問題ない用途であれば使用できる」(説明員)としている。

photophoto (左)@seguro wesの非常停止ボタン。充電池内蔵で最大約39時間連続使用できる (右)@seguro wesの無線受信機[クリックで拡大]

 非常停止ボタンを含む従来の安全系のネットワークは、遅延などの無線による信頼性を懸念し、有線を使用するのが当たり前となっていた。しかし、AMRなどの移動機器については無線での非常停止機能が必要になる。また、既存の常設設備であっても有線でネットワークを接続する負荷は大きく、設置に制限を受ける場合などがあった。無線化ができれば移動機器への対応だけでなく、これらの既存設備への安全対応でも新たな用途が期待できる。「機能安全規格に対応した無線の非常停止デバイスは海外では出ているが国内では選べる機種は少ない。@seguro wesは非常に簡単に使える他、海外製の5分の1程度の価格帯で手ごろに使えるところが特徴だ。今まで有線でしかできないと諦めていたところでも無線化できるところを訴えていきたい」(説明員)としている。

 今後はさらに1対他で、複数のAMRを一括停止するような技術の開発なども進めているという。「AMRが複数台動いている中で緊急停止させる場合に、1つ1つボタンを押すのは遠隔でも大変だ。非常時は一括で止められるようにしていく」(説明員)としている。

photophoto 非常停止ボタンをセーフティカーテンなどに置き換えて使用することも可能。遠隔にある信号灯がボタンを押すとすぐに赤に切り替わっている[クリックで拡大]

ソフトウェアパッケージによりAGVをAMRに

 もう1つが、AMRやAGVなどに向けた自律移動ソフトウェアパッケージ「@mobi(アトモビ)」だ。@mobiは自律移動ロボットの各種機能を実現するソフトウェアパッケージで、センサー、コントローラーとスマートフォンアプリケーションをオールインワンパッケージで提供する。移動機構を持つロボットに組み込むことで簡単に自律移動を実現できるようになることが特徴だ。

 障害物回避機能を搭載しており、リアルタイムに経路中の障害物を回避しゴールに到達させられる。3Dセンシング機能(オプション)でスロープや起伏のある地形でも高低差を考慮した自律移動も行える。森林やトンネルなど特徴量の少ない環境でも高精度の自己位置推定が可能だ。操作においても、スマートフォンやPCなどから目標地点と通過点を指定するだけで最短経路を自動で算出し自律移動する。WebAPIを公開しており、既に使用しているシステムへの組み込みも行える。

 このシステムにより今後期待されているのがAGVのAMR化だ。「自律移動型の搬送ロボットへの期待は高まる一方だが、それを全て一から開発すると負荷が非常に大きくなる。@mobiを使用することで開発期間を大幅に短縮できる。また、既存のAGVに対し@mobiを後付けすることでAMR化することなども可能だ。既にそういう引き合いも増えている」(説明員)としている。

photo @mobiにより自律移動を行えるようになったAMR[クリックで拡大]

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