トヨタ自動車のレクサス「LM」にパナソニック オートモーティブシステムズの後部座席向け48型ディスプレイシステムが採用された。
パナソニック オートモーティブシステムズは2023年12月13日、トヨタ自動車のレクサス「LM」に後部座席向け48型ディスプレイシステムが採用されたと発表した。テレビやラジオ、BluetoothやUSB接続によるオーディオの視聴の他、HDMI端子やWi-FiによってPCやモバイル端末を接続して仕事やエンターテインメントに使うこともできる。
パナソニックが後部座席向けディスプレイに参入したのは1997年で、トヨタ自動車の「グランビア」で採用された。ディスプレイの大型化、天井吊り下げ型などさまざまな搭載方法の採用、ディスクの再生、Wi-Fi接続などさまざまな進化を遂げてきた。新型LM向けの48型ディスプレイは「車載用としては世界最大」(パナソニック調べ)だという。
搭載車種拡大の計画は現時点ではないものの、ディーラーオプションやアフターマーケットなどの販路を視野に展開を検討する。また、MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)向けの車両にも提案していく。
LMは、ショーファーカー向けのMPVだ。後部座席の乗員がくつろげる移動空間の提供を目指して開発され、2023年4月にフルモデルチェンジした。新型LMはショーファードリブンに特化した4座仕様で、後部座席の乗員(最大2人)によるさまざまな利用シーンを想定して48型ディスプレイシステムが搭載される。
48型ディスプレイシステムはアスペクト比32:9という横長な表示の特徴を生かして、センター1画面(フルHD)、左右2画面(フルHD×2)、横長1画面と複数のモードで表示できるようにした。左右2画面モードではワンタッチで左右の画面を入れ替えることができる。HDMI端子は2系統搭載し、車内で仕事をする場面にも対応する。
画面サイズを最大化するため液晶パネルメーカーと協業して、車載部品に求められる強度を考慮しながら狭額縁化を図った。従来は液晶パネルの周囲を固定していたが、背面固定方式に変更することで額縁幅を42%削減。また、液晶パネルとディスプレイシステムを一体で捉えて車載部品に求められる剛性を確保した。これにより、デザイン性を損なうことなく従来品の液晶パネル2枚分の画面サイズの搭載を可能にした。
開発に当たってパナソニック社内の液晶パネル開発の経験者が集まってチームを結成し、内部構造の見直しなど液晶パネルメーカーの開発をリードしたという。
48型の大型ディスプレイは、車両のピラーからピラーまでにわたるサイズだ。側面衝突時に衝撃を受けやすく、破損した場合には乗員にけがを負わせることが想定された。パナソニック オートモーティブシステムズはトヨタ車体と協力し、衝突時に破損しない構造を成立させた。トヨタ車体は、車両側の衝撃伝達経路やベンチでの見極め手法を、パナソニック オートモーティブシステムズは各部品の材料特性や衝撃解析による部品の挙動などの情報を提供した。
当初、新型LMの後部座席向けディスプレイは26型で開発が始まったが、さらなる大型化の要望に応えて新規ディスプレイモジュールの開発を決めた。仕様決定が遅れたため、大型ディスプレイの開発や車両としてのシステムの制約を克服するための関連部品との調整などを通常よりも短期間で進めることが必要になった。
品質担保だけでなく、開発リードタイムの短縮が求められるため、以前から検討していたマネジメント手法「Critical Chain Project Management(CCPM)」をトライアル導入した。CCPMではプロジェクトをタスクごとに分解し、日程への影響度から優先順位を明確化する手法だ。当初は機能実装と評価に14.5カ月を要する見込みだったが、今やるべきことに集中することで全体最適を図り、リードタイムを2.5カ月短縮することに成功したという。
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