ミドリムシから飼料と肥料を生み出すユーグレナ、国内農家の救世主となるかスマートアグリ(2/2 ページ)

» 2023年12月15日 08時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]
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バイオ燃料事業のコストを肥料/飼料事業で回収

 また、飼料や肥料でのユーグレナの活用はバイオ燃料事業でもシナジーを創出するという。井上氏は「バイオ燃料事業で本格的な商業展開を行う場合、ユーグレナの栽培や抽出した油脂のバイオ燃料化などにかかるコストをバイオ燃料の販売だけで回収するのは難しいとみている。しかしながら、油脂を抽出したユーグレナを飼料あるいは肥料で活用することで採算が合うと想定している」と語った。

 なお、バイオ燃料事業では、ユーグレナから抽出された油脂を用いたバイオ燃料の製造/供給を行う国内実証プラントの稼働を2024年1月末に終了し、マレーシアで大手国営企業のPETRONASやイタリアの半国有石油/ガス会社のEniと共同で商業プラント建設プロジェクトに注力する。この商業プラント完成後には、2基目の商業プラントとバイオ燃料原料であるユーグレナなどの研究開発拠点もマレーシアに設置する見通しだ。

バイオ燃料事業の商業化のイメージ、マレーシアで商業プラントを建設 バイオ燃料事業の商業化のイメージ、マレーシアで商業プラントを建設[クリックで拡大] 出所:ユーグレナ

 今後の展開について、サステナブルアグリテック事業では、既存事業の成長や研究開発の果実化(新商品の開発/上市)、国内外における新規M&A/ボルトオン(事業拡充目的)投資の実行、他事業とのシナジーの顕在化を行う。同事業の売上高は2022年時点で20億円だが、これらの取り組みにより、将来は売上高100億円、調整後EBITDA10億円を安定的に創出する事業群の構築を目指す。「2028〜2033年にはこの目標を達成したい」(井上氏)。

サステナブルアグリテック事業の将来像 サステナブルアグリテック事業の将来像[クリックで拡大] 出所:ユーグレナ

 加えて、サステナブルアグリテック事業の目指す姿として、バイオマス未利用資源を用いた飼料や肥料で農業生産が行われ、作物や畜産物が加工/流通され、消費者が消費して、その食料残渣物がバイオマス未利用資源となる「循環型農業」の実現を掲げている。これにより、主に海外から輸入される飼料/肥料原料の輸送コストや環境負荷、為替の影響の問題を解消する。

農業を巡る社会課題

 農林水産省が2021年に発表したレポートによれば、2011〜2021年の10年間で農家数は36%減少し、2021年には耕地面積はピークから174万ヘクタール(ha)減り、農家の平均年齢は67.9歳となり高齢化が深刻化している。

農家数の推移などの動向 農家数の推移などの動向[クリックで拡大] 出所:ユーグレナ

 同省が2023年11月に公表した資料では、円安や地政学リスクなどの影響で飼料と肥料の価格が現在高騰しており、その対応に農家は苦労しているという。「農業で一番高いコストが肥料や飼料だとされている」(井上氏)。

配合飼料価格工場渡り価格の推移 配合飼料価格工場渡り価格の推移[クリックで拡大] 出所:ユーグレナ
肥料原料の輸入価格の動向 肥料原料の輸入価格の動向[クリックで拡大] 出所:ユーグレナ

 さらに、国際連合食糧農業機関などの資料によれば、森林伐採のうち農業に起因するものが全体の80%を占め、温室効果ガス全体の26%は「食と農」の由来で、過去50年間で喪失された生物多様性の68%が農業が要因となっている。

農業の環境負荷 農業の環境負荷[クリックで拡大] 出所:ユーグレナ

 これらの課題を考慮し、政府は「みどりの食料システム戦略」を2021年に策定した。みどりの食料システム戦略では、2050年までに目指す姿として、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量を30%低減することや有機農業の取り組み面積の割合を25%に拡大すること、肥料/飼料、原料を輸入から国内生産に転換することなどを求めている。

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