日本市場において今後の大きな成長を期待しているのが車載イーサネット製品である。マーベルジャパン カントリーマネージャー兼セールス副社長のマイク・バトリック氏は「自動運転やコネクテッドカー、SDV(ソフトウェア定義自動車)といった自動車業界を変革させるメガトレンドに共通するイネーブラーになるのが、車載システムのデータ伝送を高速に行える車載イーサネットだ」と延べる。
ただし、車載イーサネットの量産車への採用は欧米の自動車メーカーが先行しているのが実情だ。その背景にあるのが、車載コンピュータであるECU(電子制御ユニット)によって構成されるアーキテクチャ違いである。欧米の自動車メーカーは、ECUをデータセンターのように整理してネットワークにつなげる「ゾーンアーキテクチャ」の採用を広げている。「このゾーンアーキテクチャは、スケーラブルでソフトウェアとの親和性も高い」(バトリック氏)。一方、日本の自動車メーカーは、ポイントツーポイントでECUをつなげる従来型のドメインアーキテクチャにとどまっており、ゾーンアーキテクチャへの移行は進んでいない。
マーベルの調査では、欧米の自動車メーカーを中心に新車のモデルイヤーベースで2025年には約40%が、2029年には80%以上がゾーンアーキテクチャを採用するようになると想定している。バトリック氏は「このような市場動向もあり、今後は日本の自動車メーカーもゾーンアーキテクチャの採用を進めることになるだろう」と見込む。実際に、TechInsightsによる調査でも、自動車出荷台数の2023~2030年の年平均成長率が3%であるのに対し、車載イーサネットポートの出荷数は同24%と大幅に上回ると予測されている。
また、日本の自動車メーカーのゾーンアーキテクチャ移行が遅れているという指摘はあるものの、5社がマーベルの車載イーサネット製品を採用しており、今後はこれが拡大していくことは確実だという。「欧米では2024~2025年にかけて、高速の10Gbps車載イーサネット製品が量産車の中枢部に採用されるだろう。日本は欧米に比べて2世代ほど遅れており、2026年に1Gbps車載イーサネット製品の搭載が始まると見ている」(マーベルジャパン 自動車セールス&マーケティング ディレクターの遠藤千里氏)。
これらの他、日本市場ではNTTが提唱する光ベースの次世代ネットワーク基盤構想「IOWN」などを中心に電子光学ICに対する技術的なニーズが高まっている。バトリック氏は「マーベルもそういった動向は意識しており、顧客とのPoC(概念実証)なども行っている。米国本社のR&D部門とも協調しながらキャッチアップしていきたい」と述べている。
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