マーベルジャパンが注力する4つの市場の動向や有力製品を中心とした事業戦略などについて説明。生成AIの登場でデータセンター向けのインターコネクト製品の需要が年率2倍で伸びていることに加え、欧米で本格採用が進む車載イーサネットを日本の自動車メーカーが採用検討していることを明らかにした。
マーベルジャパンは2023年12月12日、東京都内で会見を開き、注力する4つの市場の動向や有力製品を中心とした事業戦略などについて説明した。生成AI(人工知能)への注目が集まる中でデータセンター内部やデータセンター間をつなぐインターコネクト製品の需要が年率2倍で伸びていることに加え、欧米で本格採用が進む車載イーサネットを日本の自動車メーカーが採用検討を始めていることを明らかにした。
Marvell Technology(以下、マーベル)は1995年創業の米国のファブレス半導体メーカーだ。2023年度(2023年1月期)の売上高は59億200万米ドル(約8600億円)で、従業員数は6800人以上となっている。マーベル カスタム・コンピュートソリューション事業部 シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのウィル・チュウ(Will Chu)氏は「当社は企業理念として、データを高速に信頼性のある状態で取り扱えるようにするデータインフラストラクチャ向けの半導体製品を提供することを掲げている。現在は、データセンター、携帯電話基地局、企業向けネットワーク、車載の4市場に注力している」と語る。
主要な製品としては、HDDやSSDなどストレージ向けのコントローラー、光ファイバー接続などに必要な電子光学IC、携帯電話基地局向けのベースバンドプロセッサやDSP、ネットワーク機器向けのイーサネットスイッチや物理層IC、イーサネット技術を自動車向けに展開している車載イーサネット製品、データセンターなどで必要となるセキュリティ製品がある。
マーベルはファブレス半導体メーカーではあるものの、ファウンドリーと連携する形で5nmや3nmといった微細化に対応したプラットフォームを構築している。また、AIやプリプロセッサに用いられるアクセラレータ、イーサネットの伝送性能に大きく関わる高速ミックスドシグナルなどのIPをそろえ、複数の半導体チップをパッケージ内に組み込むマルチチップレットモジュールやインパッケージメモリ、光電変換回路をパッケージ内に組み込むコパッケージドオプテイクスなどのパッケージ技術も有している。「これらを組み合わせて先進的な半導体製品を提供していく」(チュウ氏)という。
チュウ氏が、注力4市場の中で最も重視しているのがデータセンターである。1990年代に登場したデータセンターの処理性能はCPUによって着実に伸びてきたが、ChatGPTに代表される生成AIの登場によってGPUの大規模導入が進み、今後10年間で性能が1000倍になると見込んでいる。この性能向上は、生成AIの基になるLLM(大規模言語モデル)などのAIモデルのパラメータ数が指数関数的に伸びていることに対応するためだ。チュウ氏は「GPT-3の3年後にリリースされたGPT-4のパラメータ数は10倍になっている。これらのAIモデルを処理するには、データセンター内をつなぐインターコネクトの帯域幅をさらに広げなければならない。今後年平均で50%の勢いで帯域幅の拡大が求められるだろう」と強調する。
このような生成AIによって新たな進化が求められるデータセンター市場は、マーベルにとって大きなチャンスになる。データセンターの1プラットフォーム当たりに用いられるICの数は、カスタムICアクセラレータが数千個、光インターコネクトを処理するオプティカルDSPが数万個、ストレージ向けコントローラーが数十万個、イーサネットスイッチが数百個、高速メモリをつなぐCXLメモリエキスパンダーが数千個で「1995年の創業から25年以上データインフラストラクチャ製品に注力してきたマーベルのDNAが息づいており、これら全ての分野の技術リーダーだ。当社のDNAが息づいている。マーベルこそがこのチャンスをものにできる」(チュウ氏)としている。
また、チュウ氏は足元の市場動向として、データセンターにおけるインターコネクト製品の需要について、2022年の売上高2億米ドルに対して2023年は4億米ドルに達しており、2024年も8億米ドル以上となる見込みなど、生成AIの登場によって年率2倍で成長していることを明らかにした。
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