3D CADベンダーが推進するクラウド対応で設計開発環境はどう変わる?3D設計の未来(4)(2/2 ページ)

» 2023年12月04日 09時00分 公開
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クラウド上でのデータ保存/共有が可能な設計開発環境

クラウド上でのデータ保存/共有が可能な設計開発環境のイメージ 図2 クラウド上でのデータ保存/共有が可能な設計開発環境のイメージ[クリックで拡大]

 図2は、社内外の作業PCからクラウド上のプラットフォームにアクセスし、3D CADデータのコラボレーションスペース(共有フォルダ)を利用できる設計開発環境のイメージです。3D CADをインストールしたPCからクラウドに接続するには、専用のプラットフォーム接続環境(機能)が必要となります。SOLIDWORKSの製品群のうち、3DEXPERIENCEプラットフォームとの接続利用を前提とした、3DEXPERIENCE SOLIDWORKSによる設計開発環境(の最も基本的な使い方)がこれに該当します。

 クラウド上にある3D CADデータのコラボレーションスペースでは、担当プロジェクトや担当者の役割などによって、設計データの閲覧のみ許可、編集まで許可といったように権限を付与することが可能です。

 社外の協力会社の担当者がクラウドプラットフォームに接続するには、同じようにプラットフォーム接続環境を用意する必要があります。その上で、委託元のプロジェクト管理者からの許可(招待/権限)をもらうことで、クラウドプラットフォームへのアクセスが可能となり、相互でのデータ共有を実現できます。なお、社内外ともにそれぞれの作業PCのローカルフォルダに3D CADデータを保存することも可能です。

 この設計開発環境の場合、3D CAD機能、つまり3D CADのアプリケーションは各作業PCにインストールしておく必要があるため、先に述べたデスクトップ版、SNL版と同様に、ハイスペックなPC環境が求められます。

 ここでは、クラウド上でのデータ保存/共有によるコラボレーションにとどめて紹介しましたが、「SOLIDWORKSのクラウドプラットフォーム戦略」の説明の中で、3DEXPERIENCE SOLIDWORKSは“SOLIDWORKSの機能を拡張できる”と述べた通り、クラウド上でのデータ保存/共有だけでなく、ダッソー・システムズが提供する「Abaqus」のソルバーを用いた解析をはじめ、SOLIDWORKSではできなかったより高度な設計開発/コラボレーションを実現できるようになります。また、こうしたメリットを多くのデスクトップ版ユーザーに提供するために、クラウドプラットフォーム(3DEXPERIENCEプラットフォーム)に接続するための環境も別途用意されています(筆者はこちらを利用しています)。

3DEXPERIENCEプラットフォーム上のコラボレーションスペース(3DSpace)でデータ共有しているイメージ(筆者環境にて) 図3 3DEXPERIENCEプラットフォーム上のコラボレーションスペース(3DSpace)でデータ共有しているイメージ(筆者環境にて)[クリックで拡大]

クラウド上で3D CAD/コラボレーション機能を提供する設計開発環境

クラウド上で3D CAD/コラボレーション機能を提供する設計開発環境のイメージ 図4 クラウド上で3D CAD/コラボレーション機能を提供する設計開発環境のイメージ[クリックで拡大]

 最後は、クラウドプラットフォームが3D CAD機能も、データ保存/共有によるコラボレーション機能も提供する設計開発環境です(図4)。フルクラウド版として紹介したSOLIDWORKS Cloudが該当します。社内外の作業PCのWebブラウザから、クラウド上のプラットフォームにアクセスすることで、3D CADデータのコラボレーションスペースを利用できるだけでなく、3D CAD機能をはじめとするさまざまなアプリケーション(xApps)が使えます。

 Webブラウザを介し、クラウド上のコンピュータリソースでアプリケーションを操作できるため、必ずしも作業PCがハイエンドである必要はありません。

 ちなみに、SOLIDWORKS Cloudには、パラメトリック設計環境を提供する3D Creatorの他、フリーフォーム設計の「3D Sculptor」、板金設計の「3D SheetMetal Creator」、構造設計の「3D Structure Creator」、モデルベースと図面ベースの機能を統合した「Manufacturing Definition Creator」、レンダリング用の「3D Render」など、さまざまな設計/コラボレーションツールを含むロールが用意されています。

「3D Creator」ロールで使える「xDesign」による設計イメージ 図5 「3D Creator」ロールで使える「xDesign」による設計イメージ[クリックで拡大]


 既に、勤怠や経理、清算システムといった業務系アプリケーションの領域では、クラウド/SaaS利用は当たり前のものとなりました。最近では、3D CAD運用においても「クラウド」という言葉を聞くことが増えてきましたが、「クラウドに設計データを置くことは危険だ」と否定的に考える人も少なくありません。そこで、次回は設計開発におけるクラウド利用のメリット/デメリットについて掘り下げてみたいと思います。お楽しみに! (次回へ続く

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著者プロフィール

土橋美博(どばし よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛けるプレマテック株式会社で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)/SOLIDWORKS User Group Network(SWUGN)のリーダーも務める。


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