メリットの多いAMだが、日本では普及が進んでいないのが現状だ。その第一の理由として挙げられるのが日本の産業構造にある。
日本は欧米と比べてモータースポーツや航空宇宙産業の裾野が小さい。日本は既存技術によるモノづくりの完成度が高いことから、サプライチェーンおよび生産管理(生産コスト)が高水準で効率よく最適化されているため、新しいプロセスの導入が難しい状況にあり、金属3Dプリンタの必要性を感じないという。さらに、日本の職人の優れた製造技術により、AMの魅力が低減されることがある。
これらの理由から産業界ではAMの可能性、活用性、価値が十分に理解されない状況にある。AMのノウハウの多くはブラックボックスになっており、活用するためには経験と時間が必要とされる中で、日本では人、モノへの投資のハードルが高く、ますます欧米との差が開いてきている。
日本におけるAMの普及、サポートを目指して群馬積層形プラットフォーム(GAM)は、2021年にスタートした。GAMは、デジタルによるモノづくりを理解し、新しいモノづくりに貢献する人材育成、AMの知見を共有して実際のモノづくりにつなげる実用化、そしてGAMとして独自の技術開発に取り組む研究開発の3つを柱として、新たな価値創造による地域産業界への貢献を目指している。
AMを普及させるためには、日本の産業構造に合った部分で分野への注力が必要な他、部品コストだけではなく、部品の製造、使用、廃棄/再利用まで含めたトータルコストによる評価の訴求も求められる。また、積層造形の実用化モデルの見える化、設備投資への負担軽減、OJT以外の人材育成にかける時間とコストの負担軽減なども必要となる。
GAMは人材教育については、初級(技術の基礎)、中級(技術の実践)、上級(高度カスタマイズ)の独自の教育プログラムを企業会員向けに用意している他、学生向けにデジタルモノづくりの教育および体験ができるようなプログラムを提供している。
実用化のサポートとしては、参加企業が「AMによりどんなことができるかを体験できるか」(鈴木氏)をテーマに初期コンサルテーション、PoC(概念実証)、技術サポートを通じて、実践的な活動を実施中だ。さらに、共同研究・開発の場として「サロン」の提供・運営を行いノウハウの共有を図っている。メンバー同士で開発研究を進めた試作製造から得た技術データ、結果が共有され、ノウハウの蓄積にもつながっている。
なお、現在GAMでは「コンフォーマル冷却金型への金属積層造形の適用」と「少量生産品への金属積層造形の適用」の2つのテーマに焦点を当てて研究開発を進めており、実用化を目指している。
そこで道しるべの役割を果たしているのが「探索マップ」だ。GAM独自の取り組みであり、目的に向かう道筋は決して1つではなく、複数ある道筋によっては違う価値にたどり着くこともできる。それぞれの「旅路」がこの探索マップとなっており、旅路はさまざまな状況や、発見、結果によって変化、発展していく。GAMでは、AMの活用を目指して共に歩む仲間を県内外で募っている。
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