群馬から金属3Dプリンタによるデジタルモノづくりを広げるGAMの挑戦金属3Dプリンタ(1/2 ページ)

本稿では「ITmedia Virtual EXPO 2023秋」において共和産業 代表取締役社長で群馬積層造形プラットフォーム(GAM) 代表理事の鈴木宏子氏が行った「群馬発世界へ、GAMが金属3Dプリンタで進めるデジタルモノづくり」をテーマとした講演を紹介する。

» 2023年11月10日 08時00分 公開
[長町基MONOist]
群馬積層造形プラットフォーム(GAM) 代表理事の鈴木宏子氏

 ITmedia Virtual EXPO 実行委員会が主催し、アイティメディア MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、BUILT、スマートジャパン、TechFactoryが企画したオンライン展示会「ITmedia Virtual EXPO 2023秋」が2023年8月29日から 9月29日まで開催された。

 本稿では、同展示会で共和産業 代表取締役社長で群馬積層造形プラットフォーム(GAM) 代表理事の鈴木宏子氏が行った「群馬発世界へ、GAMが金属3Dプリンタで進めるデジタルモノづくり」をテーマとした講演を紹介する。

金属3DプリンタによるAMは“足し算の手法”

 金属3Dプリンタは金属粉末を使って金属積層造形(Additive Manufacturing、以下AM)を行う装置だ。従来の金属加工は主にマシニングセンタなどの工作機械を利用し、金属(鉄、アルミなど)の塊を削る、いわば“引き算の手法”であり、既に技術が確立されて安価で量産化向きだ。

 一方、金属3Dプリンタによる積層造形プロセスは主に金属粉末にレーザーや電子ビームを当てて溶融、凝固する、ゼロから形を作っていく“足し算の手法”となる。部品の3D設計データに基づくデジタルのモノづくりであり、従来できなかった形状の部品などができるメリットがある。ただ、現状では金属3Dプリンタは高価で高付加価値の製品向きとなっている。また、造形時間が長く、大量生産には不向きだ。

金属3Dプリンタと従来の金属加工の違い 金属3Dプリンタと従来の金属加工の違い[クリックで拡大]出所:GAM、画像出所:PxHereおよびAddUp

 既に、欧米では航空機、ロケットなどの航空宇宙分野の製品に適用されている。特に、これまで複数の部品で構成されていたワークが一体造形でき、その結果、必要強度を保ちながら大幅な軽量化や使用材料の減少などが可能になる。

 医療分野への適用も進んでいる。「切削加工では難しい複雑な形状が、いとも簡単にできてしまう」(鈴木氏)ため、例えば人工関節など患者に合った(カスタマイズされた)形状のものを作ることができる。

 F1などのモータースポーツ分野でもエキゾーストマニホールド、ハブキャリア、フレキシブルジョイントといった独自な複合部品を金属3Dプリンタで一体化するなど実績が積みあがってきている。

 この他、ガスタービン部品も金属3Dプリンタによって従来不可能だった複雑な冷却回路を設けて耐熱性が向上するなどの応用が進んできた。

航空宇宙などでのAM適用事例 航空宇宙などでのAM適用事例[クリックで拡大]出所:GAM、画像出所:Depositphotos、AddUpおよびWikimedia
モータースポーツなどでのAM適用事例 モータースポーツなどでのAM適用事例[クリックで拡大]出所:GAM、画像出所:SiemensおよびAddUp

 AMのもたらすメリットをまとめると、まず工業製品、部品としては軽量化、一体化、複雑形状への対応、カスタマイズなどの高付加価値を生み出すことができ、モノづくりのデジタル化が進むことでジェンダーやハンディキャップの解消が図られサプライチェーン改革、熟練工の減少への対応につながる。これらが結果的に環境負荷の軽減などを実現する

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