これから先、日本が変化を遂げるには?3D設計の未来(2)(2/2 ページ)

» 2023年10月11日 07時00分 公開
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2.新しい設計開発環境

デジタルネイティブに耳を傾ける

 日本の平均年齢は48歳です。間もなく50歳に到達します。一方、海外の平均年齢はもっと若く、米国も中国も38歳です。若い世代といえば、最近ではデジタルを駆使して便利な世界を作れるスキルを備えた「デジタルネイティブ世代」の人たちの活躍も目立っています。

 ここでのキーワードは“便利な世界”です。筆者は、日本でこのデジタルネイティブの人たちが便利な世界、便利な仕事のやり方をしようとしたときに、“これを阻害しようとするものが日本の企業の中にある”ように思えてなりません。これを阻害するのではなく、これを進めることのできる環境こそが必要だと考えます。

  • デジタルツール活用の新技術を駆使することで……
    • 設計/生産技術力を向上させる
    • 海外生産コストに勝るトータルコストを実現する
    • 国内調達による部品の安定供給体制を構築する
    • 工程のデジタル管理を実現する
    • プロダクトパートナーとの共創につなげる
    • アイデアをすぐに形にできる環境を構築する

 これこそが“これからのモノづくり”であり、デジタルネイティブの人たちに発揮してもらうべきスキルだといえます。

3.変わらない設計者の本質

 一方、この20年間で設計者が行うべき仕事の本質に大きな変化はありません。

  • 機械設計者の必要な知識
    • 製図:JIS(ISO)に基づいた正しい製図
    • 材料:機械材料の選定
    • 機械加工法:部品の加工方法
    • 公差設計:公差の設定の方法/工程能力指数
    • 強度設計:強度設計につながる材料力学などの知識とCAEへの発展
    • 信頼性設計:機能性の劣化を考慮する
    • 要素設計:機械要素とその設計方法を理解する

 これらについて、設計者はアナログ的な知識として学ぶ必要があります。この知識がベースにあることで、デジタルの活用が成り立ちます。例えば、AI(人工知能)を活用するとした場合、その学習に用いられる一つ一つの情報は設計の知識によるものであり、さらに、AIによって得られた結果の妥当性を判断する際にも、設計者の知識が必要となります。

 AIの活用により、これら知識の組み合わせは人間が考える情報量をはるかに超えることになります。2022年から始まった「第4次 AIブーム」といわれる現在、「ChatGPT」(3.0)は40兆を超える知識を導くことができるようになりました。これは人間が一生涯に得られる知識の1000倍に相当する規模だといいます。

 AIは単純な判断にとどまらず、何らかのアウトプットを生成する力があります。設計者が必要とする原理原則の知識を基に、AIによって「自分の知識にないものが得られる」ようになることは、エンジニアリングの世界に大きな変革をもたらすでしょう。ただ、少なくとも今の段階では「その最終判断は人間が行う」ということにはなりますが……。

 「これから機械の設計開発環境はAIによってどう変化しますか?」とChatGPTに質問してみました。その答えを以下に抜粋します。

  • (1)自動化と高度な設計最適化:
     AIは、複雑な設計課題を自動化し、高度な最適化を実現します。機械の設計プロセスにおいて、AIは多くの設計変数や制約条件を考慮し、最適な設計を提案します。これにより、性能向上やコスト削減が可能になります
  • (2)シミュレーションとテストの向上:
     AIは物理的なプロトタイプを作成する前に、仮想シミュレーションを高度化します。これにより、設計の問題点を特定し、修正するための迅速なフィードバックが得られます。また、AIは実際のテストデータから学習し、設計の改善をサポートします
  • (3)カスタマイズと個別化:
     AIは顧客のニーズに合わせて機械をカスタマイズし、個別化するために活用されます。機械の設計や機能を柔軟に調整し、異なる市場や用途に対応できるようにします
  • (4)グローバル協力とチームコラボレーション:
     AIは地理的に分散したチームとの協力を向上させ、設計プロセスを効果的に管理します。リモートコラボレーション、プロジェクト管理、コミュニケーションの改善などが含まれます

 この答えは情報の組み合わせだといえますが、要点を的確に捉えています。「自動化」「仮想検証の充実」「クラウド」は3D CAD環境にとって重要なテーマです。生成AIが盛り上がる一方、これに歯止めをかけようとする動きもありますが、日本の企業が競争力を維持するにはAIを活用すべきだと考えます。 (次回へ続く

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著者プロフィール

土橋美博(どばし よしひろ)

1964年生まれ。25年間、半導体組み立て関連装置メーカーで設計・営業・3次元CAD推進を行う。現在、液晶パネル製造装置を主体に手掛けるプレマテック株式会社で3次元CADを中心としたデジタルプロセスエンジニアリングの構築を推進する。ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)/SOLIDWORKS User Group Network(SWUGN)のリーダーも務める。


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