“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第16回では、騒音低減技術について触れる前に、騒音計の使い方についておさらいする。
今回から「騒音低減技術」について説明します。まずは「騒音計」の使い方をおさらいしましょう。
図1に「普通騒音計」を示します。大体これくらいのボタンがあるでしょうか。廉価品が簡単に手に入りますが、騒音対策をするのならこれくらいのボタンと電圧出力端子がある騒音計を購入する必要があります。
以下、各ボタンについて1つずつ説明していきます。
JIS(参考文献[1])では、いろいろな騒音が定義されています。使うのは、音圧レベルLp(sound pressure level)、騒音レベル(A-weighted sound pressure level)、等価騒音レベルLAeq,T(equivalent continuous A-weighted sound pressure level)でしょうか。
音圧レベルLpは連載第2回で説明しましたね。等価騒音レベルLAeq,Tは、騒音作業に従事する労働者の保護のための規制(騒音障害防止のためのガイドライン/参考文献[2])に使用されていて、間欠音など騒音レベルが時間的に変化する場合、その平均値を求める際に使用します。騒音計がデジタル機器になって簡単に測定できるようになりました。等価騒音レベルは次式で定義されています。
式1から分かるように、等価騒音レベルは音圧の実効値(rms値:Root Mean Square)の二乗ですね。実効値も連載第2回で説明しました。
人間の聴覚は低い周波数の音に対しては鈍感で、音圧が大きくてもうるさく感じません。つまり、音圧をデシベル表示した値が人間の聴覚による「うるささ」とは一致しません。人間の聴覚による「うるささ」とデシベル表示した音圧を一致させるために、測定音圧波形を周波数フィルターに通して表示します。この周波数フィルターのことを「A特性フィルター」と呼び、図2のような特性となります。
A特性フィルターの100[Hz]の値に注目してください。−20[dB]です。つまり、100[Hz]の100[dB]の音と、1000[Hz]の80[dB]の音が同じくらいの大きさに聞こえることになります。音圧振幅で表現すると、10分の1倍異なった音が同じ大きさに聞こえるということです。騒音対策のために音源の振動速度を測定し、200[Hz]以下の周波数だった場合、人間にはあまり感じられないので、より高い周波数の音を優先して対策すべきかを考えます。この辺りの内容は連載第3回で説明しました。
A特性フィルターを通して測定された騒音レベルは、JISでは「騒音レベルLpA」(A-weighted sound pressure level)と呼ぶことになっています。「騒音レベル」=「A特性フィルターを通した音圧レベル」となります。以下のように表記します。
よく見掛ける表記といえば「騒音レベル 94dB(A)」ですが、最近のJISに従えば上記の表記となります。
「C特性フィルター」は今は使われていません。「Z特性フィルター」は音圧信号を周波数分析する際に使用します。
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