矢野経済研究所は、高機能フィルム市場に関する調査の結果をまとめたレポートを発表した。2022年の高機能フィルム出荷数量は、前年比20〜30%減となった。
矢野経済研究所は2023年8月21日、日本、韓国、台湾の高機能フィルム市場に関する調査結果をまとめたレポートを発表した。ディスプレイ、光学、電気、電子、一般産業用のベースフィルムおよび加工フィルムなどの高機能フィルムを対象とし、製品セグメント別の動向や参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
今回のレポートによれば、高機能フィルム市場は、新型コロナウイルス感染症による巣ごもり特需で拡大傾向にあったが、2022年5月頃から、スマートフォンやテレビなどの最終製品を製造するセットメーカーの余剰在庫調整、生産調整の影響で大幅に縮小。その結果、2022年の高機能フィルム出荷数量は、前年比20〜30%減となった。
2023年に入ると、セットメーカーの余剰在庫調整と生産調整がほぼ完了し、回復速度は弱いものの、同市場は再びプラス成長に転じている。2024年の出荷数量予測は、2021年比でポリイミド(PI)フィルムが7.2%増、積層セラミックコンデンサー(MLCC)リリースフィルムが2.8%減、一般産業用PETフィルムが5.4%減、光学用ペットフィルムが6%減で、2021年の需要水準に回復するのは2024年〜2025年頃になる見通しだ。
同市場の中でもPETフィルム市場は、2022年の夏頃から在庫調整、生産調整が実施されたが、需要期の10月に入っても回復せず、下半期以降はPETフィルムの多くの用途でオーダーが大幅に減少した。そのため、同年のPETフィルム市場規模は、前年比20.5%減の49万6600トン(t)まで縮小している。
一方、韓国では、大幅な在庫調整、生産調整が進められたため、2022年末〜2023年頭頃にはPETフィルム需要が回復に転じた。2023年3〜4月以降、そのスピードも加速すると見込まれている。しかし、日本は、PETフィルム市場の縮小が2022年の比較的早期から始まり、2023年3月頃まで緩やかに続いてきた。2021年水準への回復は、2024年〜2025年頃になると見込まれている。
日本のフィルムメーカーは、資源循環やカーボンニュートラルを新たな競争の枠組みとし、Film to Filmリサイクルなど環境に焦点を当てた技術開発や提案を進めている。Film to Filmリサイクルは、バージン材を使用する場合以上の製膜技術、品質管理技術が求められるため、日本のフィルムメーカーにとっては新たなビジネスチャンスがあるとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.