オムロンは2023年6月15日、京阪奈イノベーションセンタにおいてラウンドテーブルを開催し、同社の技術開発や具現化の方向性、研究子会社であるオムロンサイニックエックスの活動内容などに関して説明した。本稿はOSXに関する説明を中心に紹介する。
オムロンが、各地に分散していた研究開発部門を集める形でグローバルR&Dの拠点として2003年に設立したのが京阪奈イノベーションセンタ(京都府木津川市)である。同社は2023年6月15日、その京阪奈イノベーションセンタにおいて、技術開発やその具現化の方向性、オムロンサイニックエックス(以下、OSX)の活動内容などを説明するラウンドテーブルを開催した。
このラウンドテーブルのうち、オムロンが開発している最新の卓球ロボットのコンセプトや同社が目指す人と機械との関係性などを前編記事として紹介した。本稿は後編としてOSXに関する説明を中心に取り上げる。
OSXは2018年に設立されたオムロンの研究子会社だ。AI(人工知能)やロボティクス、IoT(モノのインターネット)、センシングなど最先端技術の研究者を外部から研究員として採用。オムロンの現状の事業ドメインなどから未来を描くフォーキャスト型ではなく、理想とする近未来の姿を実現するために必要な技術や構造を検討し、実装概念を描き出すバックキャスト型のイノベーションを進めることが目的だ。
社名のサイニックエックスは、オムロン創業者の立石一真氏が発表した未来予測に関する「SINIC(サイニック)理論」と、未知なる技術 「X(エックス)」を組み合わせた。
OSX 主任研究員 牛久祥孝氏は「賢く学ぶ」「賢く動く」「賢く理解する」という3つのキーワードでOSXの取り組みの一部を説明した。
「賢く学ぶ」では、調理作業と言語指示を理解したエンジニアレスロボット制御の実現に取り組んでいる様子を紹介した。例えば、「人参を短冊切りにする」という指示を受けると、その意図を理解し、動作の生成、ロボットの制御まで行うというシステムだ。料理に着目しているのは、人間にとって一番身近なモノづくりといえるからだという。牛久氏は「料理は、人が創造性を発揮し、多くの人が慣れ親しんでいる」と語る。
もちろん料理そのものが主題ではなく、AIやロボットが人のタスクを学習する方法論を、料理という題材を通して探索していくことが目的だ。実際にきんぴらごぼうを作る過程の6枚の写真から、機械学習を用いて自動的に生成されたレシピが表示された。料理の動画を用いた自動レシピ作成にも取り組んでいる。
「賢く動く」では、ソフトロボットなどについて紹介した。現在の産業ロボットは、高精度に位置と姿勢を制御し、決められた動作に対して正確に繰り返し動くことができる反面、対象が少しでもずれると作業ができなくなる恐れがある。
「ロボットをソフトかつ受動的に動くものとして作り直そうと考えている。あえてぐねぐね動くような箇所を作ったり、ロボットに掛かっている負荷やその時の姿勢などさまざまな情報を使ったりすることで、人間と同じように手探りしながら作業できるようにする提案をしている」(牛久氏)
ロボット単体だけではなく、周囲の環境を利用して目的を達成する制御の実現などにも取り組んでいる。
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