中外製薬とオムロンが次世代ラボオートメーションで協業、非定型実験業務を自動化ロボット開発ニュース(1/2 ページ)

中外製薬は、新研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」において、オムロン、オムロン サイニックエックスとの共同研究に基づき新たに導入した次世代ラボオートメーションシステムを紹介した。

» 2023年07月19日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]

 中外製薬は2023年7月18日、同年4月に全面稼働を開始した新研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」(横浜市戸塚区)において、オムロン、オムロン サイニックエックスとの共同研究に基づき新たに導入した次世代ラボオートメーションシステムを紹介した。創薬研究に用いる装置の間でサンプルを搬送するモバイルロボットは既に導入済みで、2023年10月からはこれまで困難だった非定型の実験業務の自動化を可能にするロボットシステムの実証実験を開始する計画だ。

中外ライフサイエンスパーク横浜の研究棟で稼働するモバイルロボット。創薬研究に用いる装置の間でサンプルを搬送する[クリックで再生]

 中外ライフサイエンスパーク横浜は、これまで富士御殿場研究所(静岡県御殿場市)と鎌倉研究所(神奈川県鎌倉市)に分かれていた研究拠点を統合した新たな研究拠点である。日立製作所 戸塚工場の跡地に全16棟(地上6階/地下1階)の建屋を展開しており、敷地面積15万8600m2、延べ床面積は11万9500m2。研究者約800人を含む1000人の従業員が勤めている。

中外製薬の飯倉仁氏 中外製薬の飯倉仁氏

 中外製薬 執行役員 研究本部長の飯倉仁氏は「研究開発型製薬企業である当社にとって、中外ライフサイエンスパーク横浜は重要な成長エンジンに位置付けられる。現在注力している中分子創薬をはじめ、主力の抗体医薬品や低分子創薬でも難易度の高い研究に取り組んでいけるよう、研究者間の連携、DX(デジタルトランスフォーメーション)、人材確保/外部連携を促進していく」と語る。

 中でもDXについては、コンピュータなどデジタル技術を活用する“ドライ”と、実験業務から成る“ウェット”を高次元に融合することによって実現していく構えであり、ウェット力強化の中核を成すのが次世代ラボオートメーションシステムとなる。

“ドライ”と“ウェット”を高次元に融合してDXを推進する “ドライ”と“ウェット”を高次元に融合してDXを推進する[クリックで拡大] 出所:中外製薬

 中外製薬はこれまでも、実験業務を自動化するラボオートメーションを低分子創薬の分野を中心に進めてきた。低分子創薬と比べてより複雑な操作が必要になる抗体医薬品や中分子創薬についても、遺伝子クローニング自動化システム、培養・抗体精製自動化システムといった形で自動化の範囲を広げている。

低分子創薬を中心に進めてきた自動化システム 低分子創薬を中心に進めてきた自動化システム[クリックで拡大] 出所:中外製薬
遺伝子クローニング自動化システムと培養・抗体精製自動化システムの概要 遺伝子クローニング自動化システムと培養・抗体精製自動化システムの概要[クリックで拡大] 出所:中外製薬

 とはいえ自動化されていない多種多様な実験業務が存在しており、研究員の業務時間を圧迫している状況に変わりはない。実際に、勤務時間の70%近くをルーティンワーク的な実験業務が占めるという調査結果も出ている。このルーティン実験業務を自動化し、より創造的な業務に割り当てられる勤務時間の割合を増やしてイノベーションにつなげていこうというのが次世代ラボオートメーションシステムの狙いとなっている。

 次世代ラボオートメーションシステムの取り組みには2つに方向性がある。1つは、先述した自動化システムが個別の“ワークセル”にとどまっているという課題に対して、ワークセル間での連携を可能にするモバイルロボットの導入である。もう1つは、ワークセルで自動化可能な実験内容が限られているという課題に対して、これまで人でしか行えなかった非定型の実験業務を自動化するロボットシステムだ。

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