まず、モバイルロボットは、各ワークセル間でマイクロプレートに入ったサンプルを運ぶ用途で導入している。個別に完結していた自動化システムの間をロボットがつなぐことにより、自動化のレベルがさらに向上したことになる。また、自動化システムの冗長利用や、システムの集約による効率化なども可能になる。
2022年に鎌倉研究所で導入したモバイルロボットが中外ライフサイエンスパーク横浜に移設されており、現在は2台を用いてインキュベーター間でのマイクロプレートの搬送や、マイクロプレートへの薬液の分注作業などを行っている。モバイルロボットは、オムロンのAGV(無人搬送車)にローツェのマテハン機器を搭載するなどしてマイクロプレートを取り扱えるようにしている。
非定型の実験業務を自動化するロボットシステムでは、あらゆる実験の自動化に向けて「人のように動くロボット」の実現を目指している。そのためには、センシングやAI(人工知能)による知性だけでなく、モバイルロボットのようなモビリティ、そして非定型の実験業務への対応で最も重要になる器用さなど、さまざまな機能が必要になってくる。
現在検討しているのは、モバイルマニピュレータ(MoMa)とワークベンチロボット(WBR)の2種類である。モバイルマニピュレータは、遠心分離機などの人による操作を前提とした研究機器の操作やサンプルの設置/取り出し、搬送に対応する機能を備えている。ワークベンチロボットは、2台の多関節ロボットから成る双腕ロボットにより実験ベンチ内で高速かつ高精度に実験を行う役割を担う。先述のモバイルロボットと同様に、モバイルマニピュレータとワークベンチロボットも連携して自動化を止めないような仕組みになっている。
これらのロボットシステムによって、実験準備、実験操作、データ取得/解析、機器操作から成る実験業務を柔軟に自動化していく。また、人との共存性を高め、研究員とロボットが一緒に実験を行っていくことに加え、産業用ロボットの専門家ではない研究員がこれらのロボットシステムを簡単に取り扱えるようにすることも構想されている。
2023年10月からの実証実験では、実験業務の負荷が比較的高い細胞実験を対象に、一般的な実験室の一区画で行う予定だ。2023年度末までに検証を完了し、その評価結果を基に今後の取り組み内容を検討するという。
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