中外製薬は6月3日、宇都宮工場のバーチャル見学会を開催。同社の主力製品のリウマチ治療薬「アクテムラ」や血友病治療薬「ヘムライブラ」の生産工程の一部が公開された。また、今後予定されている設備投資などにも言及した。【修正あり】
中外製薬は2022年6月3日、宇都宮工場のバーチャル工場見学会を報道陣向けにオンラインで開催。同社の主力製品のリウマチ治療薬「アクテムラ」や血友病治療薬「ヘムライブラ」の生産工程の一部を公開したほか、今後予定されている設備投資などにも言及した。
中外製薬が開発した医薬品の製造は、100%子会社の中外製薬工業が担っている。医薬品は化学合成で製造されるアスピリンやイブプロフェンなどの低分子(合成)医薬品と、細胞培養によって産生されるアクテムラやヘムライブラなどのタンパク質由来のバイオ医薬品に大別される。低分子医薬品とバイオ医薬品の生産方法は大きく異なり、バイオ医薬品の方がより複雑になる。宇都宮工場はバイオ医薬品における日本最大級の生産施設を持つ。
アクテムラの生産は、小さな容器に冷凍保存されていた種細胞を培養する培養工程から始まる。高さ5m、幅2mほどにもなる容量1万l(リットル)の培養槽だが、種細胞からこの1万lの規模まで培養するのに約1カ月かかる。細胞が増殖するために必要な酸素濃度やpH、攪拌は自動制御されている。その後、遠心分離装置で細胞が生成した抗体を含んだ上澄みと細胞を分離する。
精製工程ではカラムクロマトグラフィーや、20nmサイズの粒子をろ過できるフィルターを用いて不純物や雑菌などを除去し、半透膜を用いて低分子物質を分離する限外ろ過によって抗体を濃縮する。濃縮後は専用のボトルに小分けされ、−50℃のフリーザーで凍結、製剤工程で使われるまで保管される。
製剤工程では、バイアルと呼ばれるガラス瓶を洗浄、滅菌した後に薬液を注入する充填(じゅうてん)工程と、薬液を注入したバイアルにアルミキャップを装着して密封する巻締工程が紹介された。
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