病院給食の「13京通り」配膳作業自動化、誰でもできる標準化で院外調理拡大目指すFAニュース(2/2 ページ)

» 2023年07月04日 08時30分 公開
[長沢正博MONOist]
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スカラロボットなどを活用してトレーや皿供給を自動化

 完成した自動化システムは大きく3つのパートに分かれている。まず、スカラロボットでトレーを1枚ずつ取り出しコンベヤーに流す。次に、各自の食札データに基づいて皿供給機から主食や主菜、副菜などの皿が作業者の手前まで送られてくる。作業者は出てきた皿をトレーに並べ、次の工程に流すだけだ。皿供給機は最大50枚の盛り付け済みの皿を保管でき、皿は背面より作業者が追加する。牛乳やジャムなどの付加物の配膳はコンベヤー上で作業者が行う。コンベヤーの各作業者の前には、生産指示を表示するモニターが設置されている。

トレーメーク自動化システムの概要[クリックで拡大]出所:パナソニックコネクト
主菜、副菜などの皿が作業者の手前まで送られてくる 主菜、副菜などの皿が作業者の手前まで送られてくる[クリックで拡大]

 自動化により皿を探す作業がなくなり、負荷が軽減された他、準備からトレーメーク完了までの作業がスムーズになった。入社2日目のスタッフでも作業できるようになり、シフト組が容易になった他、最後に配膳を確認するチェッカーでのNG件数が激減した。ラインで働く作業者の人数も自動化前の14人からほぼ半減した。

スカラロボットを使ったトレー供給機 スカラロボットを使ったトレー供給機[クリックで拡大]
皿供給機から皿を送り出す機構 皿供給機から皿を送り出す機構[クリックで拡大]

 配膳計画もデジタル化した。これまでは給食管理ソフトで献立を作成すると、複数の食札がまとまった状態で印刷し、スタッフが1枚ずつに裁断、配膳する順番に並べ替え、現場に手渡していた。病態などによる献立の変更も手書きで修正していた。今回、パナソニックコネクトと共同で開発したソフトウェアによって、給食管理ソフトで献立を作成後に各患者に合わせた変更もできるようにし、食札を1枚ずつ直接現場で印刷できるようになった。

システム導入の効果 システム導入の効果[クリックで拡大]出所:パナソニックコネクト

 パナソニックコネクト 食品加工ソリューション事業 ダイレクターの大江徹直氏は「われわれにとって食品加工ソリューションは新しい取り組みだが、労働力不足が喫緊の課題である食の現場から新たな貢献領域を探求していきたいという思いで第一食品とともに取り組んでいる。われわれのモノづくり、自動化のノウハウで食品加工産業の持続的な発展に貢献していきたい」と意気込む。

 第一食品 相模原工場 工場長の矢ヶ崎忠徳氏は「自動化システムを入れた時、入社した2日目の女性が最初にトレーニングを受けたが、一通り教えたらすぐにできるようになって驚いた。今ではその方が最も習熟している」と効果を語る。

 トレイメーク自動化システムは3月に稼働したばかりだが、小宮氏は「従来のトレーメークの作業では、熟練するまでに2、3年かかる上、訓練された人間が工場ごとに十数人必要となる。その作業を今日入社した人でもできるようにしたかった。重要な一歩を踏み出すことができたと考えている」と手応えを感じている様子だ。

左からパナソニックコネクトの五十嵐氏、大江氏、第一食品の小宮氏、矢ヶ崎氏

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