病院給食の「13京通り」配膳作業自動化、誰でもできる標準化で院外調理拡大目指すFAニュース(1/2 ページ)

病院外の施設で病院給食の調理や加工を行う完全院外調理を手掛ける第一食品とパナソニックコネクトは両社で開発したトレーメーク自動化システムを第一食品の相模原工場に導入した。

» 2023年07月04日 08時30分 公開
[長沢正博MONOist]

 病院外の施設で病院給食の調理や加工を行う完全院外調理を手掛ける第一食品とパナソニックコネクトは2023年6月21日、両社で開発したトレーメーク自動化システムを第一食品の相模原工場(神奈川県相模原市)に導入したと発表。同日、相模原工場を報道陣に公開し、設備の概要を説明した。

トレーメーク自動化システムを導入したライン トレーメーク自動化システムを導入したライン[クリックで拡大]

 医療機関で提供される給食は、院内に厨房を設けて食材の発注から調理、盛り付け、配膳、洗浄などを自前で行う院内調理と、セントラルキッチンを持つ委託業者にて調理し、トレーへの盛り付けまで済ませた後に急速冷却、病院へ配送後に再加熱し、配膳する完全院外調理の2つがある。

 第一食品の試算によれば、日本における病院給食の市場規模は年間約1兆1000億円で、割合は完全院外調理を含めた外部委託と院内調理が50%ずつ占めているという。高齢化などを背景に病院給食の市場はまだ拡大していくが、院内調理は厨房への設備投資が必要な上、早朝からの勤務など過酷な労働環境や人手不足などの問題もあり、外部委託が加速していくとみられている。

院内調理と完全院外調理の違い 院内調理と完全院外調理の違い[クリックで拡大]出所:第一食品
第一食品の小宮仁氏 第一食品の小宮仁氏

 第一食品 代表取締役社長の小宮仁氏は「病院給食は365日時間通りに必ず食事を出さなければならない緊張感の高い仕事だ。人手が足りずに安定的に給食が提供できなくなるところまで差し迫っている」と現状を語る。

 特に最も難易度が高い作業とされるのが、入院患者の食事内容に適合した盛り付け済みの食器を棚から選び、トレーに並べるトレーメークだ。患者の病態やアレルギーなどによって食事の種類や形態、食材が変わるため、膨大な数のパターンが存在する。献立は毎日変わる上、誤配膳は患者の命にかかわる。熟練者を育成するのに2、3年はかかるという。

「トレーメークでは患者の名前と食事の情報が書かれた食札を見て作業するが、絶対に間違えてはいけないため精神的にも体力的にも非常に負担がかかる。セントラルキッチンは調理や盛り付け、洗浄などさまざまな作業を集約することでスケールメリットが出るが、このトレーメークだけは一人一人への対応が必要になり、スケールメリットが出ず、事業拡大の課題になっていた」(小宮氏)

トレーメークの具体例 トレーメイクの具体例[クリックで拡大]出所:第一食品

 パナソニックコネクトでは2019年に食品加工ソリューション事業を立ち上げ、第一食品から依頼を受けてトレーメークの自動化に着手した。コンセプトは「トレーメークを誰でもできる作業にすること」(小宮氏)だった。配膳のパターンはアレルギーへの対応まで含めると13京通りに及ぶ。出荷時間に間に合わせるために、作業は長くても3時間以内に終わらせなければならない。

 稼働までには、基礎調査も含めて約3年を要した。「自動化が可能なのかの調査で半年、システムの仕様の詰めや設計で9カ月、設備の開発、製造で1年3カ月、現場でのテストで半年ほど」(パナソニックコネクト 食品加工ソリューション統括部 シニアマネジャーの五十嵐雅孝氏)。

トレーメーク工程の難しさとプロジェクトのゴール トレーメーク工程の難しさとプロジェクトのゴール[クリックで拡大]出所:パナソニックコネクト
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