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» 2023年06月21日 06時00分 公開

脱炭素と循環型社会の実現へ、トヨタが積み重ねる多種多様な取り組み脱炭素(2/2 ページ)

[福岡雄洋MONOist]
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3本柱で進めるモノづくり段階のCO2削減

 トヨタは2035年までに、グローバルの全工場でのカーボンニュートラル達成を目指している。その実現に向けて「日常改善」「モノづくり革新」「再生可能エネルギーや水素の活用」の3分野で取り組む。

現場、設備、インフラが連携した改善

 日常改善では、製造現場と設備開発、インフラが三位一体となって、改善の提案と実行を進める。「付加価値を生まない無駄なエネルギーを削減し、原価に加えてCO2排出を軽減している」(荻村氏)状況だ。また、好事例については社内だけでなく、グループ会社や仕入先とも共有。省エネ活動のノウハウを教え合う勉強会も実施している。

塗装工程のCO2を7%削減

 モノづくり革新の事例が、2017年に導入した「エアレス塗装機」だ。従来のエアスプレー式塗装機では飛び散る粒子が多く、塗料の塗着効率に課題があった。エアレス塗装機では静電気の作用を活用して飛び散る粒子を微量にとどめ、塗着効率を向上。従来比で約7%のCO2削減を実現した。

着々と再エネを導入

 再生可能エネルギーと水素の活用では、各国と各地域の特性に合わせ、使用するエネルギーのグリーン化を進める。再生可能エネルギーの利用については、(1)工場敷地内に設置、(2)敷地外に設置、(3)外部からの権利購入の3つの考え方で取り組んでいる。

 (1)については各工場における太陽光パネルの設置を進めるとともに、田原工場(愛知県田原市)では風力発電も設置している。(2)では他社との協業で再エネ設備の設置を進めている。(1)(2)の取り組みを進めた上で、さらに再エネ電力も購入する。トヨタ自らが再エネを増やす取り組みを通じて、再エネへの置き換えを推進している。

 水素の活用で重視するのが、「作る」「ためる」「使う」のそれぞれの観点だ。「作る」では太陽光の電気で水を電気分解する技術、「ためる」では水素の回収、「使う」では燃料電池やガスエンジンによる発電、水素バーナーによる鋳造、塗装工程への熱供給などを行っている。

仕入先とも連携したカーボンニュートラル

 サプライチェーンにおけるCO2削減については、「(トヨタと仕入れ先が)相互連携して削減に取り組む必要がある」(荻村氏)と断言する。まず第1段階としてティア1においてCO2総量の把握、つまり排出量の見える化を進め、第2段階として品目単位、素材の仕入先までの把握に努める。

 実際のCO2低減活動としては、トヨタが車両設計の段階から仕入先と相談し、構造変更による加工時のエネルギー削減、また低CO2材や再生材の採用を検討している。一方、仕入先においてもトヨタの間でノウハウを共有し、研究会も実施するなど「トヨタは仕入先とともにカーボンニュートラルを目指す」(荻村氏)という考えだ。

 サプライチェーンにおける温暖化対策では、物流分野での取り組みも強化している。生産部品の物流では、仕入先が個社で配送する方式から、トヨタが複数の仕入先を巡回して引き取る方式に改善。ミルクランによる高積載化を実現し、輸送効率の向上を図る。

リサイクルしやすいクルマづくり

 温暖化対策と並ぶ重要な環境課題と認識しているのが、循環型社会の構築だ。トヨタはクルマのライフサイクル全体で循環型社会の実現を目指す。

 「開発設計」「生産」「販売」「サービス廃棄」の4段階に層別し、各段階で廃棄物の発生抑制と再利用、再資源化に向けて、「トヨタグローバル100ディスマントラーズプロジェクト」「トヨタグローバルCar to Carリサイクルプロジェクト」に取り組んでいる。

 トヨタグローバル100ディスマントラーズプロジェクトでは、自動車解体のモデル施設を世界中に設置し、廃油や廃液、フロンガスなどの適正処理を広める活動に取り組んでいる。現地のリサイクル事業者と連携し、使用済み自動車からより多くの資源を環境に負荷をかけずに安全に回収、処理する仕組みづくりを進める。

 トヨタグローバルCar to Carリサイクルプロジェクトは、使用済み自動車の資源が再生材として再利用される量を増やすための取り組みだ。トヨタは2030年までに再生樹脂の利用を日本と欧州で現状の3倍以上に拡大する目標を掲げており、交換したバンパーの回収や再生、樹脂化に加え、車載電池のリサイクルやリユースなどを進めている。

 併せて、解体しやすい車両構造「易解体設計」の導入も積極化している。自動車のリサイクル性を高めるためには、同じ素材をまとめて容易に回収することが重要なポイントになる。そのため、「世界中の解体事業者を実際に訪問し、解体作業が安全かつ短時間に行える解体しやすい構造を検討、それを設計に反映している」(荻村氏)。

 例えば、ワイヤハーネスの事例では、缶詰のフタのように引っ張るだけで簡単に解体できる「プルタブ式アース端子部」を採用した。また、配線を工夫することで、他の部品に干渉することなく引きはがすことができる構造も取り入れている。車両設計段階から資源回収しやすい構造を反映させる取り組みを加速させる。

カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの関係

 荻村氏は講演のまとめとして、「カーボンニュートラルを考えることはサーキュラーエコノミーを考えることでもある」と強調した。カーボンニュートラル対策として進めている燃費や電費の改善、モノづくり革新によるCO2低減はエネルギー消費の削減につながり、また、再生材の使用率増加は廃棄物を削減するためだ。

 サーキュラーエコノミー対策として行っている構造変更による材料使用量の削減は、車両を軽量化して燃費や電費を改善し、走行中に排出するCO2の削減に貢献する。また、易解体設計や解体処理の適正化は、解体時のエネルギー消費を抑えることができるため、廃棄時のCO2低減に結び付く。さらに、廃棄部品の3Rを進めると、廃棄、製造段階でのCO2が低減できることから、荻村氏は「サーキュラーエコノミーを進めるとカーボンニュートラルも進む」とも指摘した。

 カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーは密接な関係にある。だからこそ、荻村氏は「お互いに視野を広げ、両方の目線を持った取り組みが重要になる。どちらにも効果のある対策を伸ばし、背反を減らしていく」と訴えた。

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