「脱炭素は単一の技術では実現できない」、日米欧の自工会が方向性を再確認電動化

日本自動車工業会は、2050年までに道路交通におけるカーボンニュートラルを達成するための方向性を各国の自動車工業会と再確認した。

» 2023年04月06日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 日本自動車工業会(自工会)は2023年4月4日、2050年までに道路交通におけるカーボンニュートラルを達成するための方向性を各国の自動車工業会と再確認したと発表した。

 自工会では、カーボンニュートラルの“山の登り方”が1つではないことや、持続的で実用的なCO2排出削減には多様な選択肢が必要であることを発信してきた。これに関して欧州自動車工業会(ACEA)、イタリア自動車工業会(ANFIA)、米国自動車工業会(Auto Innovators)、カナダ自動車工業会(GAC)、フランス自動車工業会(PFA)、英国自動車工業会(SMMT)、ドイツ自動車工業会(VDA)と認識を共有した。

電動化と3割のカーボンニュートラル燃料

 2022年11月のCOP27(第27回気候変動枠組条約締約国会議)に合わせて、国際自動車工業連合会(OICA)は道路交通の脱炭素化に向けた具体的な政策提言をまとめたポジションペーパーを発表。2050年に向けた道路交通におけるカーボンニュートラル達成の方向性は、このポジションペーパーで示されている。

 その中で、世界の自動車産業全体でカーボンニュートラルを達成できる単一の技術はないとの見方を示し、電動車への移行を促進すると同時に、世界各国のさまざまなニーズを満たすために幅広いパワートレイン技術の革新を続けると述べている。パワートレイン技術には、水素、バイオエタノール、バイオメタン、バイオディーゼル、HVO(水素処理植物油)、合成燃料などを使う内燃機関も含まれている。

 ポジションペーパーでは、日本の自工会が分析したカーボンニュートラルのシナリオにも触れられている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による2050年の「1.5℃シナリオ」で必要な道路交通部門のCO2排出削減は、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)での電動化と、カーボンニュートラルな燃料を2020年の世界の自動車燃料消費の30%に相当する水準で供給することを組み合わせれば達成できると自工会は分析している。

CO2排出削減のシナリオ[クリックで拡大] 出所:OICA

 ポジションペーパーはEVの販売台数が驚異的なペースで増えていることに触れつつ、「EVは世界で14億台を超える自動車の一部にすぎない。販売の増加も世界中の全ての国で同じではない」と述べている。短中期的には、世界の多くの国にとって本格的な電動化が現実的または実用的な道筋ではない可能性があるとしている。

 例えば、ブラジルは世界最大のサトウキビエタノール生産国で、エネルギー作物を輸送部門のバイオ燃料として長年使用してきた。2021年にブラジルで販売された新車の軽車両(light vehicle)では、84%にフレックス燃料対応のエンジンが搭載されている。一方、EVのシェアは0.14%で、価格やインフラなどがネックになっている。また、ブラジルは移動距離が長く、充電グリッドが限られることから大型車の電動化も難しい取り組みとなる。そのため、バイオ燃料が国の脱炭素戦略においても中心になっているという。

2021年のEVの販売とシェア[クリックで拡大] 出所:OICA

 ポジションペーパーでは、燃料のカーボンニュートラル化は、エンジンを搭載した車両の低炭素化において研究開発と政府の支援に値する重要な技術だと主張している。価格や品質、入手性においてユーザーフレンドリーとなり、効率の高いエンジン技術と組み合わせれば、EVがユーザーの選択肢にならないときに大幅な排出削減に貢献するとみている。水素エンジンは、一部の市場、特に大型車やその他の特定のユースケースで電動化の代替手段となる可能性があると見込んでいる。

 経済的に有利な国であっても、地理的あるいはその他の要因によっては移行段階ではエンジン車やHEV、PHEVが代替手段として優れる場合もあると指摘した。特にPHEVはモーターのみで走行する運転モードと、EVよりも長い走行距離を持ち、大規模な充電インフラへの投資も不要であることからメリットがあるとしている。

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