SaaS型PLMを推進、自動運転向けや産業機械業界、防衛業界などでシェア拡大製造ITニュース(1/2 ページ)

アラスジャパンは記者会見を行い、モノづくり情報に対する基盤としての強化を進めていくとともに、AnsysやAVEVA、Microsoftなどのプラットフォームパートナーの協業強化により成長を進めていく方針を示した。

» 2023年06月20日 07時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 アラスジャパンは2023年6月16日、東京都内で開催したユーザーイベント「ACE 2023 Japan」(同月15〜16日)に合わせて記者会見を行い、モノづくり情報に対する基盤としての強化を進めていくとともに、Microsoft、Ansys、AVEVAなどのプラットフォームパートナーの協業強化により成長を進めていく方針を示した。

「Aras Innovator」を3つのトレンドに合わせて強化

photo Aras CEOのロッキー・マーチン氏

 オープンソースのソフトウェア開発をベースに、クラウドPLM(Product Lifecycle Managemen)システム「Aras Innovator」を展開してきたArasだが、柔軟なモノづくり開発基盤としてPLMへの関心が高まっている他、製品の複雑化により従来PLMを使っていない業界への導入拡大が進んでいることから急速に成長している。2022年の年間経常収益(ARR)は30%以上の成長となっている他、サブスクリプションサービスの継続率も95%となっており、高い支持を得ている。全世界のサービス導入企業数は550社以上となり、さらにパートナー数も150社以上となっている。Aras CEOのRoque Martin(ロッキー・マーチン)氏は「世界で最も早く大きく成長しているPLMベンダーだ」と強調する。

 「Aras Innovator」が広く受け入れられている理由としてマーチン氏は「Focused(特化していること)」「Open(オープン)」「Flexible(柔軟性)」の3つのポイントを挙げる。「全てのリソースをPLMに集中し単一のプラットフォームとして開発している点、さまざまなシステムとの連携が行える点、お客の声を聞き製品に反映させていく姿勢、シンプルでレジリエントである点などが評価を受けている」(マーチン氏)。

 製造業を取り巻く環境は大きく変化しているが、「Aras Innovator」ではこれらの強みをさらに生かし、トレンドに合わせた機能を加えていく。Aras プロダクトマネージメント上級副社長のJohn Sperling(ジョン・スパーリング)氏は「製造業で製品開発において変化を示すトレンドとして『複雑化の加速』『スマート、コネクテッド、自律化』『ビジネスの変化』のという3つがある。これらに対応する機能強化を進める」と語る。

photo 「Aras Innovator」の機能強化の方向性[クリックで拡大] 出所:アラスジャパン

 「複雑化の加速」に対しては、SaaS(Software as a Service)形式のPLMシステムを提供する「Aras Enterprise SaaS」の推進と、ローコードのDevOps(開発と運用が緊密に連携して開発する仕組み)関連機能の強化を進める。スパーリング氏は「『Aras Enterprise SaaS』では、従来の『Aras Innovator』で提供してきた機能性や柔軟性、相互運用性はそのままに使える一方で、インフラやメンテナンスを考える手間が必要なくなる。またローコードDevOpsで作られているため、新しいビジネス要件にも柔軟に対応できる」と価値を訴える。

photo 「複雑化の加速」に対応する「Enterprise SaaS」とローコードDevOps[クリックで拡大] 出所:アラスジャパン

 「スマート、コネクテッド、自律化」に対しては、従来の縦割りの開発体制では対応が難しい場面が増えるために分野を超えたコラボレーションを実現できるインテリジェントなプラットフォームの用意をする。「データやプロセスが常に1つのデジタルスレッドでつながっている状態になると、情報の集約などの手間が不要になり製品開発に集中できる。そのために製品プラットフォームのバリエーションを管理する『Aras Variant Management』機能などを用意する。同じプラットフォーム上でのバリエーション定義と製品定義を行うことで、あらゆる設計表現においても共通要素を再利用できるようにする」(スパーリング氏)。

photo 「スマート、コネクテッド、自律化」に対応する「Variant Management」[クリックで拡大] 出所:アラスジャパン

 「ビジネスの変化」については、環境問題やさまざまな地政学的な影響などを踏まえて、ライフサイクルを通じた接続性が求められ、それらに対応するセキュアなクラウドサービスの提供を進める。また、ビジネス変化に俊敏に対応するためにさまざまなエンタープライズITシステムとの連携を実現できるようにする。2022年に出資を決めたドイツのXPLMが提供する「XSPHERE」により、システム、機能、および組織間のコンテキストに応じて情報を簡単に相互リンクできるようにし、システム連携を容易に実現する。スパーリング氏は「設計データなどに対しリンクを貼るだけでなくデータそのものを移行することもできる。複雑な統合プロジェクトなどを実施しなくても簡単にシステムを統合して価値を得られる」とその利点について語っている。

photo 「ビジネスの変化」に対応する「XSPHERE」[クリックで拡大] 出所:アラスジャパン
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