現在、環境エネルギー、北九州市立大学、HiBD研究所、NEDOは、HiJET技術を用いたバイオジェット燃料製造プロセスの商用化に向け、パイロットプラントを整備し、連続運転を目指している。併せて、SAFの生産をスケールアップする中で得られるデータを活用し、バイオディーゼル、バイオナフサも商用化を目指すことで温室効果ガス(GHG)の排出量削減に貢献する。これにより、2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、新エネルギー分野におけるCO2などGHGの排出量削減に役立つ。
今後は、環境エネルギー、北九州市立大学、HiBD研究所による共同研究体制を保ちつつ、事業パートナーとして協業を目指す石油精製会社を通して、航空会社にHiJET技術で生産したSAFを供給し、副産物のバイオディーゼルとバイオナフサも石油化学会社や建設/運送会社に提供することを目指している。
国内のSAF市場の規模に関して、国土交通省が2021年5月28日に発表した資料によれば、2030年における年間のSAF想定需要は250万〜560万kl(キロリットル)で、市場規模は2500億円〜1兆1000億円になると見込まれている。2050年における年間のSAF想定需要は2300万klで、市場規模は2兆3000億円になる見通しだ。
野田氏は「JAL(日本航空)とANA(全日本空輸)では使用するジェット燃料のうち10%をSAFに切り替えると2022年に発表した。現在は、両社合わせて、年間で1200万〜1300万klのジェット燃料を使用している。そのため、120万〜130万klのSAFが必要だとされている。そこで、国内の航空業界では、フィンランドの再生可能燃料メーカーであるNESTE(ネステ)をはじめとする海外のメーカーとSAFを調達するためのパートナーシップを結んでいる」と述べた。現状、HiJET技術で生産されたSAFの価格は通常のジェット燃料と比べ3〜4倍するため、生産量のスケールアップなどで価格を下げていくという。
全国油脂事業協同組合連合会が2017年に発表した資料によれば、国内の廃食用油排出量は年間53万t(トン)となっている。野田氏は「年間53万tのうち、当社で使用可能なのは半分の26万tだと考えており、国内航空業界で必要な120万〜130万klのSAFに現状は対応できない。そこで、海外の企業から廃食用油を調達できる仕組みも構築していく」とコメントした。
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