競争力強化では、国内拠点における開発効率向上やリソース増強も重要になってくる。これまで研究開発は大阪府守口市の本社を中心に行ってきたが、電池セルとモノづくり技術について新設する2つの拠点に集約して行っていく。
まず、電池セル開発はパナソニックグループの拠点が多数ある大阪府門真市の新拠点に集約する。次世代材料/プロセス開発から商品開発に至るまでを手掛ける集約型開発拠点となる。立ち上げは2025年の予定。一方、モノづくり技術の開発は住之江工場(大阪市住之江区)内に建設する新棟に集約する。生産設備/工法開発の拠点として集約し、電池モノづくりを支えるマザー開発拠点の位置付けとなる。住之江工場の新棟は2024年に立ち上げる予定だ。
さらに、これら2つの集約型開発拠点における技術とモノづくりのコア人材強化に向けて2025年度までに国内で1000人を増強する。
サプライチェーン強靭化では、カンザス工場をはじめ新工場の建設を進める北米での現地調達を強化する。2022年10月には、カナダのNMG(Nouveau Monde Graphite)との間で負極材料である黒鉛の長期供給契約に向けたMOU(基本合意書)を締結するなどしており、2025年度におけるカンザス工場での増産に向けた量の確保にはめどがついているという。
これからのモノづくりでは脱炭素が求められることから、リサイクル材の活用や低CFP(カーボンフットプリント)材の活用も進めていく。車載電池の生産に関わる資源採掘、原料加工、物流まで含めた2021年度のCO2排出量を、現地調達やリサイクル材の活用、低CFPの活用などを含めて2030年には半減させることを目標としている。
収益をけん引する産業・民生事業の2030年度の売上高目標は2022年度比約2倍の6000億円となる。中長期的に成長が見込まれる社会/生活インフラに注力し、データセンター向けに加え家庭用蓄電池も成長領域に位置付ける。家庭用蓄電池は、ユニット一体化による重複機能の削減や安全性強化で競争力を向上した新蓄電システムを2023年6月から国内向けで量産を始める。米国でも2023年度下期から導入する予定だ。「建機や二輪車などの電動化は新規領域であり、業界をリードする顧客とのソリューション共創で展開を強化していきたい」(只信氏)としている。
なお、今回の発表における業績関連の数字にはEV(電気自動車)向け電池などの販売に関する税控除で補助金が得られる米国IRA(インフレ抑制)法の影響は含めていない。2023年度の調整後営業利益で約800億円が計上される見込みであり、2024年度以降も補助金額が判明した段階で情報公開していく方針である。
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