THKは「ハノーバーメッセ2023」において、非磁性の特殊合金を使用した新製品などを展示した。
THKは「ハノーバーメッセ(Hannover Messe)2023」(2023年4月17〜21日:ドイツ時間、ハノーバー国際見本市場)において、非磁性の特殊合金を使用した新製品などを展示した。
THKが新たに開発した特殊合金「NM-1」は、磁化のしやすさを表す非透磁率が1.005未満と磁気をほとんど帯びていない上、特殊な熱処理により軸受に適した58〜64HRCという硬度を実現した。NM-1をLMガイドのLMブロックとLMレールに使用、ボールをセラミック、取り付けねじをチタン合金、エンドプレートをプラスチックにすることで、非磁性のLMガイドが製作できる。
磁場と電波を利用するMRI検査装置や陽子線治療装置など、非磁性の製品が求められる装置への採用を図る。
ユーティリティースライド「ATG」は欧州でも広がる自動倉庫の搬送台車や鉄道車両用ドアなどへ拡大を目指す。従来品のスライドレールにはなかった熱処理を加えることで表面硬度を高め、強度を向上させた。サーキュラーアーク溝を採用しており、従来品のゴシックアーチ溝よりも差動すべり量が少ないため、ストロークエンドのロック現象抑制が可能になる。これにより、安定した装置稼働に貢献する。
THKが展開する製造業向けIoT(モノのインターネット)サービス「OMNI edge」の展示も行った。LMガイドやボールねじなどの直動部品や回転部品に専用センサーを付けることで部品の状態を数値化し、AI(人工知能)を活用して予兆検知につなげる機能などを紹介した。OMNI edgeは2023年内の欧州での正式スタートを目指す。
欧州の景況感を表す指標の1つである製造業PMI(購買担当者指数)は、2020年の夏頃から景況感の拡大を示す50を上回る状態が続いていたが、インフレの進行やロシアによるウクライナ侵攻などを受け、2022年夏以降は50を割り込む状況が続いている。
ただ、THK(ドイツ法人) Director Head of Sales Europeの樽本健太郎氏は「全体的にはダウントレンドだが、リチウムイオン電池の設備投資などが加速している。中韓だけでなく欧州の地場企業も投資を進めており、そこへ入り込んでいきたい。人手不足により自動倉庫も活況になってきている。太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギー関連も伸び来ており、それにつられて加工機が回復してきている」と話す。
THKは欧州でドイツやイタリア、スペインなど12拠点を展開、生産拠点は4つ抱えている。日本から輸入している製品も多い中で、現地競合企業と比べると物流のリードタイムにはやはり差が生じてしまう。樽本氏は「余計なものは持たず、必要なものをしっかり確保するなど、モノづくりだけでなく物流全体も考慮した地産地消を強化する。欧州のニーズに対応した製品の開発などにも取り組んでいく」と意気込む。
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