帝人のスマートセンシング事業は、RFIDのセンシングに用いるUHF帯の電波をシート表面近傍にとどめることができるシート型の2次元通信媒体「セルフォーム」の開発を始めた2008年が起点になっている。当時はLAN用シート素材として事業展開を模索したものの、2010年からは他用途での検討を進めてRFIDソリューションとしての方向性を打ち出してRecoPickを開発。2013年には図書館向けのセルフ予約棚管理に採用されてからは、以降は医療機器管理、半導体ウエハーボックス管理、医療材料物流管理など事業拡大を着実に進めてきた。
特に医療分野では、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)のプロジェクトの下で2022年末で開発を進めてきた、複数の医療機関が共同院外倉庫で医療材料の物流を集中管理する「スマート物流サービス」にRecoPickやRecoFinderを提供し、大きな成果を得ている。2023年度からは、これらの成果を事業として広く展開して行く方針である。
帝人フロンティア 新事業推進本部 スマートセンシング部長の平野義明氏は「ハンディターミナルやゲートを使ってUHF帯RFIDをセンシングする場合、位置情報があいまい、読み取りが瞬間的、アンテナの干渉を避けるための設置が大変といった課題があり、用途が限られていた。これに対してRecoPickは、電波を閉じ込めてむらなく抜けなく読み取れるセルフォームによって、位置情報を正確に把握でき、常時監視も可能で、設置も容易だ。さらに、セルフォームに基づくアンテナシートだけでなく、ICタグやリーダーライター、制御を行うミドルウェアなども含めたRFIDソリューションとして提供できていることも強みの一つだ」と強調する。
RecoPickに次いで2019年から展開をスタートしたRecoFinderは、RecoPickでは難しい通過検知や消費管理などのアプリケーションで活用できるハードウェアだ。トンネルゲート型、ポスト型、ごみ箱型などがあるが、これまでに培った電波制御技術を応用し、商品やタグなどの投入口を開放型にしても検知性能に問題はない。非密閉であることにより応用範囲も広げやすいという。
今後は帝人フロンティアの産業資材部門とのシナジー創出を含めた工場関連での需要拡大が期待できる。「フルオートメーションの工場よりも、人手による作業が多い組み立て製造業は当社のRFIDソリューションの効果は大きいだろう」(重村氏)としている。
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