発光ラジカルに樹状高分子を結合し、赤色発光に成功研究開発の最前線

産業技術総合研究所は、九州大学らとの共同研究において、発光ラジカルのTTMラジカルに樹状高分子を結合させることで、発光効率を高め、赤色発光させることに成功した。有機ELデバイスの発光材料への応用が期待できる。

» 2023年04月17日 13時30分 公開
[MONOist]

 産業技術総合研究所は2023年3月28日、発光ラジカルのTTMラジカルに樹状高分子(デンドリマー)を結合させることにより、発光効率を高め、赤色発光させることに成功したと発表した。九州大学やMOLFEXらとの共同研究による成果だ。

キャプション 開発したデンドリマー結合発光ラジカルの構造と発光写真 出所:産業技術総合研究所

 有機EL素子内で従来の材料を100%の効率で発光させるには、複雑な発光過程の制御と、特別な分子設計が必要になる。一方、発光ラジカルは発光過程はシンプルだが、光照射下で分解が進行するなど安定性に課題がある。

キャプション 有機ELの発光に使われる従来の材料と新材料(ラジカル)のエネルギー準位図 出所:産業技術総合研究所

 同研究では、不安定なTTMラジカルに、カルバゾール骨格を繰り返し単位としたデンドリマーをドナー分子として結合することにより、高効率化と安定化を図った。

キャプション 代表的な発光ラジカルであるTTMラジカルとカルバゾールドナーを結合したTTMラジカル 出所:産業技術総合研究所

 その結果、発光効率が2%から63%に向上。結合するデンドリマーが大きいほど高い発光効率を示し、発光波長が短くなることが判明した。また、デンドリマー結合により、光照射下での分解速度が1000分の1以下に低減し、光の安定性が高まることが確認された。

キャプション デンドリマー結合TTMラジカルの構造、発光効率、発光波長[クリックで拡大] 出所:産業技術総合研究所

 同研究所は、開発したデンドリマー結合の発光ラジカルについて、有機ELデバイスの発光材料への応用が期待できるとしている。

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