産業技術総合研究所は、九州大学らとの共同研究において、発光ラジカルのTTMラジカルに樹状高分子を結合させることで、発光効率を高め、赤色発光させることに成功した。有機ELデバイスの発光材料への応用が期待できる。
産業技術総合研究所は2023年3月28日、発光ラジカルのTTMラジカルに樹状高分子(デンドリマー)を結合させることにより、発光効率を高め、赤色発光させることに成功したと発表した。九州大学やMOLFEXらとの共同研究による成果だ。
有機EL素子内で従来の材料を100%の効率で発光させるには、複雑な発光過程の制御と、特別な分子設計が必要になる。一方、発光ラジカルは発光過程はシンプルだが、光照射下で分解が進行するなど安定性に課題がある。
同研究では、不安定なTTMラジカルに、カルバゾール骨格を繰り返し単位としたデンドリマーをドナー分子として結合することにより、高効率化と安定化を図った。
その結果、発光効率が2%から63%に向上。結合するデンドリマーが大きいほど高い発光効率を示し、発光波長が短くなることが判明した。また、デンドリマー結合により、光照射下での分解速度が1000分の1以下に低減し、光の安定性が高まることが確認された。
同研究所は、開発したデンドリマー結合の発光ラジカルについて、有機ELデバイスの発光材料への応用が期待できるとしている。
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