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» 2023年04月13日 10時30分 公開

雪下野菜から着想、イチゴの鮮度を3カ月保つ新たな冷却庫「ZEROCO」とはイノベーションのレシピ(2/2 ページ)

[遠藤和宏MONOist]
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食品中の水分を「固液臨界状態」に

 ZEROCOで採用した技術は、氷融解時と同じエネルギーを利用して、冷却庫内の温度を約0℃とし、湿度を100%弱の状態にしているという。庫内に入れた食品の表面温度と芯温を0℃で均一にキープし、食品中の水分を「固液臨界状態(水分子から熱エネルギーが奪われ表結晶になる寸前の状態)」とすることで氷結晶の発生を抑える。

冷蔵庫などで採用されている凍結技術(左)と「ZEROCO」の凍結技術(右)[クリックで拡大] 出所:ZEROCO

 さらに、食品の芯温を0℃とするため、冷凍庫での凍結スピードを速くできるだけでなく、氷結晶が微細な状態で食品内に散らばり、細胞破壊を極めて起こりにくくし、食品の持つ細胞を崩さずに鮮度の良い状態で長期保存が行える。

 会場では、報道陣向けの試食会と、ZEROCOおよび通常の冷蔵庫で長期保存した食品の比較展示も実施した。試食会では、ZEROCOで保存したアボカドやイチゴ、メロン、ローストビーフ、海苔巻き、スシ、おはぎ、ショートケーキ、煮麺などを提供。比較展示では、イチゴ、アボカド、レタス、イカを披露した。

試食会で提供された、ZEROCOで保存したアボカドやイチゴ、メロン、ローストビーフ、海苔巻き、スシ、おはぎ、ショートケーキ、煮麺[クリックで拡大]
比較展示で披露された、62日間をかけて冷蔵庫(左)と「ZEROCO」(右)で長期保存されたイチゴ[クリックで拡大]
比較展示で披露された、62日間をかけて冷蔵庫(左)と「ZEROCO」(右)で長期保存されたアボカド[クリックで拡大]

国内の食産業を取り巻く環境とZEROCOの開発経緯

 国内外では近年、食の分野に最新のテクノロジーを取り入れた「フードテック」への関心が集まり、廃棄ロスを防ぐ管理技術や植物由来の代替肉など、新たな食の可能性やそれらを支える技術も注目されるようになった。

 フードテックが注目される理由の1つとしては地球規模での人口増加が挙げられる。2021年時点で約79億人だった世界人口は2050年に97億人に増えると推測されており、これからの30年間は世界人口の大幅増に伴う食糧問題や地球環境の悪化などの課題に直面すると予想されている。

 一方、国内では、高度な技術や優れたサプライチェーン、恵まれた自然環境と気候の中で発展してきた世界に誇る食文化があるにもかかわらず、人口が減少するとともに、食の未来を支える担い手が減少していく見込みだ。

 これらの社会課題を解決し、サステナブルな世界を実現するための手段としてフードテックは重要な役割を担うとされている。しかし、現在のフードテックでは食材本来のおいしさを保つ技術は発展途上で、農業や漁業などに関わる生産者のサポートには至っていない。

 そこで、飲食店を展開するカフェカンパニーの代表取締役社長を務める楠本氏は、日本の伝統的で自然な保管方法であり、雪の下で野菜を越冬保存する「雪下野菜」からヒントを得て、「低温と高湿」に着目し、鮮度保持技術を扱う中小企業とともに、ZEROCOの開発に踏み切った。ZEROCOの完成後、2023年3月に企業としてZEROCOを設立した。

 楠本氏は、「今後、食産業では、『素材開発(バイオなどの基礎技術系)』『流通革命(デジタル革新、オートメーションなど)』『新しいブランド創造』といった3つの分野で革命が起きると確信している。そのため、第1次産業の生産現場や国内外の物流企業、食品流通企業、小売り/外食企業など、117兆円にのぼる日本の食産業を21世紀の国家基幹産業に育成すべく、ZEROCOでは、素材の(品質)向上に貢献し、食の流通革命の起点となり、新しい食産業におけるブランド創造の推進を目指す」と述べた。

「ZEROCO」のコーポレートマーク[クリックで拡大] 出所:ZEROCO

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