業務用冷凍機器などを開発するフクシマガリレイが、現在リテールAI分野の事業展開に挑戦している。ハードウェアメーカーの同社がリテールAI分野に進出する意図とは何か。本社に設置したオープンイノベーション拠点「MILAB」と併せて話を聞いた。
2019年11月、小売業界でのAI(人工知能)活用推進を目的に、リテールAIプラットフォームプロジェクト「REAIL(以下、リアイル)」が発足した。リアイルにはトライアルカンパニー(以下、トライアル)傘下のRetail AIをはじめ、小売り、食品、物流などに携わる6社が参画しており、これまでに「スーパーセンタートライアル長沼店(以下、トライアル長沼店)」(千葉県千葉市)のスマートストア化などの取り組みを実施している。
そのリアイルに唯一のハードウェアメーカーとして参画しているのが、店舗向けの業務用冷蔵庫などを手掛けるフクシマガリレイだ。同社はAIカメラを取り付けて欠品検知などの機能を搭載しスマート化したショーケースを開発し、トライアル長沼店などに導入している。
ハードウェアメーカーであるフクシマガリレイが、リテールAI分野の技術開発に乗り出す理由は何か。その狙いについて、フクシマガリレイ 福岡支店 営業一課 課長 リテールAI推進担当の麻生達弥氏と、同 営業戦略部 営業企画課 主査の五十嵐夏季氏に話を聞いた。
フクシマガリレイは業務用冷蔵庫や店舗で設置する製品冷凍用のショーケースなどの機器開発、販売を手掛ける企業だ。この他、業務用調理機器や医療用保冷機器などの開発も行っている。グループ会社には、製品の急速冷却/凍結用装置「トンネルフリーザー」を開発するタカハシガリレイや、高機能断熱パネルを手掛けるガリレイパネルクリエイト、ベルトコンベヤーなど自動化装置のショウケンガリレイなどがある。
過去には他の冷凍冷蔵用機器メーカーに先駆けて、業務用冷蔵庫の規格化やショーケースの温度管理に取り組むなど先進的な取り組みを行ってきた実績がある。そして同社が現在、新たに目指しているのが、リテールAI領域における「AIファシリティー企業」としてのポジション確立だ。
AIファシリティー企業という言葉が持つ意味合いについて、麻生氏は「小売店舗のAI化を実現するためのハードウェア提供からインフラ導入、保守、サポート、そして導入後のソリューション提供をワンストップで提供する企業を目指す、ということだ。モノ売りだけではなく店舗のデータ分析サービスなどコト売りも手掛けるようになる」と語る。
リテールAI分野の製品、サービスとして、フクシマガリレイは大きく分けて2つのものを提供している。1つはAIカメラを搭載してスマート化したショーケースである。
ショーケース庫内(内側上部)にAIカメラを取り付けて製品の様子を撮影する。撮影した画像から製品の陳列数などを解析して、時系列グラフで確認できるデータ分析機能なども提供する。欠品数が一定以上になるとバックヤードに通知が送られるため、販売機会のロスを減らす効果が期待できる。製品情報はAIカメラが電子棚札から読み取るため、製品を入れ替えてもすぐに製品を認識可能だ。この他、電子サイネージを通じた広告展開にも対応する。
「イメージしているのは、ショーケースの『iPhone化』だ。機器とシステムを導入しさえすれば、欠品検知や自動発注、賞味期限管理や在庫管理、需要予測、サイネージを使った広告展開など、導入店舗がすぐに多様なサービスを利用できるようにしたい」(麻生氏)
カメラ画像のデータ分析ソリューションは、Retail AIと共同開発を行っている。麻生氏は「カメラ画像の分析は画像データをRetail AIに送り、分析を依頼する形で実施する。その他のハードウェアに関わる領域、例えば、ショーケースの開発や、カメラの取り付け方、画角調整などはもちろん当社が担当する」と説明する。データ分析サービスは定額課金制のサブスクリプション形式として提供する。
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