トライアルカンパニー、サントリー酒類、日本ハム、日本アクセス、ムロオ、フクシマガリレイがリテールAI(人工知能)プラットフォームプロジェクト「REAIL(リアイル)」の戦略について説明。トライアルとして首都圏初のスマートストアとなる長沼店にリテールAIなどを全面採用し実証を進めていく計画だ。
トライアルカンパニー(以下、トライアル)、サントリー酒類、日本ハム、日本アクセス、ムロオ、フクシマガリレイは2020年2月25日、東京都内で会見を開き、リテールAI(人工知能)プラットフォームプロジェクト「REAIL(以下、リアイル)」の戦略について説明した。トライアルが2020年4月24日にリニューアルオープンする長沼店(千葉市稲毛区)を活用するなどして「PoC(概念実証)レベルの取り組みを脱して数値実績を出し、流通情報革命の実現につなげていく」(トライアル傘下のRetail AI 社長の永田洋幸氏)としている。
2019年11月に発足したリアイルは、日本におけるリテールAI技術の推進に向けた取り組みを目的としている。トライアルが店舗とリテールAI技術、サントリー酒類と日本ハムがメーカー、日本アクセスが卸、フクシマガリレイが冷凍冷蔵ショーケース、ムロオが物流をそれぞれ担う。
永田氏は「流通情報革命を実現するには、テクノロジードリブンではなくオペレーションドリブン、すなわち現場が変わっていかなければならない。リアイルは、流通産業にあるムダ、ムラ、ムリをAIで改善し、来店客の買い物体験を向上していきたいと考えている。しかし、小売店舗やメーカーがそれぞれの部分最適のためにAIを使っていては効果を発揮しない。全体最適が可能なプラットフォームとして活用し、業界全体で取り組まなければ無意味だ」と訴える。
同氏が社長を務めるRetail AIが2019年4月に発表した「リテールAIカメラ」は、トライアルが「スマートストア」と位置付ける中核店舗への導入が順次進んでおり、棚内の欠品検知や顧客の導線認識などの用途に利用されている。「IoT(モノのインターネット)デバイスであるリテールAIカメラをレトロフィットで導入することにより、リアル小売店舗のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現しているところだ」(永田氏)。
リニューアルオープン後の長沼店は首都圏初のスマートストアとなる。リアイルの参加企業と連携したさまざまな取り組みを実施することで、リテールAIが必要不可欠であることを実証していく方針である。
サントリー酒類は、サントリーグループ内でビールやウイスキーなどを取り扱っている。同社 営業推進本部 広域営業本部 部長 リテールAI推進チーム シニアリーダーの中村直人氏は「製造業である当社にとって顧客は2つある。1つは、小売店舗や特約店、卸などで、もう1つは商品を購入していただく最終顧客になる。これら2つの顧客の買い物体験をどうやって向上していくかが今後の課題になる」と語る。
一方の顧客である小売店舗などとは、トライアルやサッポロドラッグストアーなどさまざまな企業との協業を進めている。そして、「もう一方の最終顧客の買い物体験向上では『時間価値』を重視している」(中村氏)という。ここで言う時間価値とは、献立の検討時間や手間、それに必要な食材の在庫の有無、レジ待ちなど、買い物に関わる時間をどれだけ効率化できるかと直結する。
そして店舗での購入だけにとどまらず、調理や消費といった自宅内での行動までを一体につなげてサービスとして提供するRaaS(Retail as a Service)の提供も視野に入れている。中村氏は「リテールAIカメラで売り場を把握できるようになり、これまで見えなかった来店客の購買行動も分析可能になってきた。そこで、従来のような画一的な売り方をするのではなく、小売店舗や特約店、卸などと連動しながら買い物体験を向上させていく必要がある。リアイルではそのプラットフォームを構築していく」と説明する。
実際に、サントリー酒類とトライアルの協業では、明確な数値実績も出始めている。例えば、トライアルにおけるサントリー酒類のビール販売シェアは2017年時点で17.8%だったが、リテールAIなどの取り組みを通して2019年には23.2%に向上している。一方、トライアルの酒類売上高も、2017年は市場全体の伸び率が4%だったのに対して11%になり、2019年も市場全体の伸び率1%に対して7%を達成している。
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