「冷蔵庫青く光らせて」、ドン・キホーテのPB家電開発舞台裏未来につなぐ中小製造業の在り方(1/3 ページ)

「驚安の殿堂」の名に恥じぬほど安く、かつ、独自色の強い品ぞろえで有名なディスカウントストア、ドン・キホーテ。同社は独自のPB家電製品も多数展開している。その開発を支えてきた1社がアズマだ。アズマは現在、ドンキPB家電開発の知見を生かした新ブランド製造に挑戦する。背景には”淘汰”への危機感があった。

» 2022年03月24日 09時00分 公開
[池谷翼MONOist]

 「驚安(きょうやす)の殿堂」の名に恥じぬほど安く、かつ、独自色の強い品ぞろえで有名なディスカウントストア、ドン・キホーテ。「何でもそろっている」と称されるほど豊富な製品ラインアップを持つ同社は、独自のプライベートブランド(PB)製品も多数展開している。その中にはオリジナルの家電製品も含まれている。

 同社が展開するPB家電製品の特徴の1つとして挙げられるのが、「安さ」だ。例えば、2017年に同社が発売した50インチの4K液晶テレビは、5万4800円(発売当時)という低価格設定で発売したため、当時大きな話題になった。この他にも、他社製品よりリーズナブルな小型ノートPCドラム式洗濯機といった“格安家電”も展開している。核となるべき機能に特化し、あまり使わない機能を省くことで生産コストを下げて低価格での販売を可能にしており、若年層を中心に支持を集めている。

ドン・キホーテの家電売り場[クリックして拡大] 出所:ドン・キホーテ

 こうしたPB家電製品の開発を裏側で支えてきた企業の1つがアズマだ。主に製品企画を担当するファブレスのメーカーで、ドン・キホーテをはじめ家電量販店など複数のPB開発を請け負ってきた。

 同社は2021年10月、同社独自の家電ブランドを立ち上げ、コードレスモップクリーナー「Water CyCleaner」や、仕切り付きの調理鍋「2食おやこ電気なべ」の発売を開始した。“主婦目線”で日常の困りごとを解決し、生活を豊かにするというコンセプトの製品だが、これらの開発には「ドン・キホーテのPB家電開発で得た知見」が生かされているという。

 ドン・キホーテのPB家電開発で得られたものとは何か。開発の舞台裏と併せて、アズマ 常務取締役 兼 事業部本部長の小川大介氏に話を聞いた。

冷蔵庫は「ガラス張りに」

MONOist ドン・キホーテのPB製造を引き受けるようになった経緯を教えてください。

アズマの小川大介氏。画像左は「Water CyCleaner」

小川大介氏(以下、小川氏) 実のところ、当時の事情をよく知る人間が社内にいないので、詳しいところは分かりません。ただ、時代の流れに合わせて変化した結果だったのではないかとは思います。当社はもともと家電製品の2次卸業務を手掛けていたのですが、家電メーカーが直接量販店に販売する方式へと変わっていき、事業の次の一手を考える必要に迫られていたようです。

 その時に、ある家電量販店からDVDディスクをPBで展開したという話が持ちかけられました。そこで台湾の工場で製造したものを、当社で卸したのですが、これが家電製品の企画に関与するきっかけになりました。その後、ドン・キホーテからPB製品開発のお話をいただきました。ちょうどそのころは、ソニーやパナソニック、東芝といった大手家電メーカー以外の、あまり見たことのないメーカーの家電製品が大手家電量販店の店頭にも並び始めた時期だったと記憶しています。今では、カインズやヤマダ電機の製品開発にも携わっており、年間で20〜30点のPB製品を出しています。

MONOist 基本的にはアズマから製品企画を提案する、という流れで開発を進めているのでしょうか。

小川氏 企画提案の方法は2つあります。1つはドン・キホーテなどクライアントから提案された製品アイデアを具体化するというもの。もう1つは、当社から家電製品のアイデアを提案する形式です。中国で開催される広州交易会(中国輸出入商品交易会)で見つけた製品の中から、ドン・キホーテなど量販店が欲しがるものを見つくろったり、当社と付き合いのある工場から送られてきた商品企画書をベースに提案したり、という形です。

MONOist どういった製品アイデアが届くのでしょうか。

小川氏 ドン・キホーテの場合だと、ちょっとひとひねりしたアイデア商品などが多いですね。例えば、冷蔵庫だと「ガラス張りにしてほしい」や「庫内で青いLEDライトを光らせて、バーのような雰囲気を出してほしい」「中の仕切り板をフレキシブルに動かせるようにしてほしい」といったリクエストをもらいます。

庫内が青く光る冷蔵庫[クリックして拡大] 出所:ドン・キホーテ

 その後、価格設定の目標値と納期をヒアリングして、条件を満たせるような冷蔵庫を探してきます。もちろん、最初は青く光りませんし、仕切り板もフレキシブルではありません。サイズ感がイメージにぴったりな製品を見つけて、LEDライトの搭載や、棚の使い勝手を改変してもらうよう工場に依頼します。

 他にも、原材料のコスト高騰などで特定の製品の価格を上げなければならない場合に、「同価格帯におさまる製品を探してほしい」といった依頼も来ます。

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