2023年3月には、有機CMOSイメージセンサーが持つ高い機能性として、あらゆる種類の光源下における良好な色再現性についての学会発表を行っている。
裏面照射型CMOSイメージセンサーでは、シアン光やイエロー光、マゼンダ光といった特定色に強度が偏った光源では色再現性を確保できないことが課題だった。有機CMOSイメージセンサーは、光電変換層が薄いため原理的に隣接画素への入射光を低減できるとともに、電気的な画素分離を行う電荷排出電極を設けることで画素境界部の不要電荷を排出し、有機薄膜下部の電極により光の透過を抑制できるため、RGB各色の混色が起きにくいことが確認された。
この正確な色再現性という特徴が加わることで、有機CMOSイメージセンサーの実用化に向けたアプリケーションもより具体化しつつある。佐藤氏は「工場の製品製造や食品の検品など検査との親和性はかなり高い。幅広いダイナミックレンジ、グローバルシャッターとの組み合わせで高度な検査を実現できるようになる。もちろん、放送機器などで8Kの高精細な映像データを記録/保存するという観点でも、正確な色再現性は大きな力になるだろう。これらに加えて、近赤外撮像との組み合わせで健康モニター/肌ケアといったアプリケーションの開拓も期待できる」と意気込む。
西村氏も「国内ではNHKやソニーが技術報告を行っており、海外でもサムスン電子やフランスのイゾルグ(Isorg)が開発に取り組むなど、次世代イメージセンサーとして有機CMOSイメージセンサーは注目されている。その中で実用化に近いポジションにあるのは当社だと自負している。顧客あってのことなので時期は言明できないが、開発サイドの思いとして数年後には実用化したいという思いはあり、そのための活動に注力している」と述べている。
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