慶應義塾大学は、リアルハプティクス技術を実装した、脊椎手術用ドリルを開発した。リアルハプティクス搭載の骨ドリルを利用した場合、手術経験の浅い外科医でも正確かつ安全な手術が可能になることを実証した。
慶應義塾大学は2023年3月13日、リアルハプティクス技術を実装した、脊椎手術用ドリルを開発したと発表した。手術経験の浅い外科医でも、正確かつ安全な手術が可能になることを実証した。神奈川県立産業技術総合研究所、横浜国立大学、モーションリブ、日本メドトロニックとの共同研究による成果だ。
リアルハプティクスとは、ロボットを人間が操作して現実の物体に接触した際の力や動きをデータ化し、リアルタイムに双方向へ伝送することで感触を再現する。力触覚機能を機械に実装することで、力加減の調整や力触覚の長距離伝送が可能となる。
今回の研究では、リアルハプティクス技術を応用し、骨ドリルに貫通検知機能を搭載した。3人の脊椎外科医が貫通検知機能搭載の骨ドリルと搭載なしの骨ドリルを用いて、ミニブタの椎弓(脊椎)を削って脊髄近くまで貫通させ、ドリル先端が貫通検知するまでの時間と貫通後にドリル先端が進行した距離を比較検証した。
その結果、貫通を検知するまでの時間と貫通検知後にドリルが停止するまでに進んだ距離は、通常の骨ドリルよりもリアルハプティクス搭載骨ドリルで有意に短かった。通常の骨ドリルに比べ、リアルハプティクス搭載骨ドリルを利用した場合の検知時間と距離は、ともに10分の1以下となった。
3人の外科医間では、貫通検知までの時間および検知後から停止までに進んだ距離に有意な差はなかった。このことから、経験の浅い外科医でも、正確に操作できることが示唆された。
脊椎領域の手術では、骨ドリルを脊椎神経や脈管系の近くで使用するため、難易度の高い操作が求められる。リアルハプティクス技術の実装により、安全性の高い手術方法の確立が期待される。
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