富士通は製造業向けVRソフトウェア「COLMINA デジタル生産準備 VPS Xphere(クロスフィア)」の最新版であるV1.7について、報道関係者向け体験会を開催した。
富士通は2023年3月24日、製造業向けVR(仮想現実)ソフトウェア「COLMINA デジタル生産準備 VPS Xphere(クロスフィア)」(以下、Xphere)の最新版であるV1.7について、報道関係者向け体験会を開催した。
最新版では組み立て業務における検証機能の強化や、無線タイプのVR用ヘッドマウントディスプレイ(VR-HMD)への対応などを行った。
Xphereは、富士通の100%子会社でパッケージ製品やエンジニアリングサービスなどを提供するデジタルプロセスが開発したソフトウェアだ。3Dデータなどを仮想空間内に取り込み実物大で再現することで、製造業の各種検証業務などに役立てる。
Xphereの使用者はVR-HMDとコントローラーを使うことで、仮想空間内で頭の向きを変える、立つ、しゃがむ、工具や部品などのオブジェクトをつかむ、離すといったアクションを自由に行える。仮想空間は複数人で共有でき、マイクを通じた会話や物の受け渡しなどのコミュニケーションも可能。遠隔地からさまざまなメンバーが打ち合わせに参加できる。3D CADデータの他、COLMINA デジタル生産準備 VPSシリーズの工程設計ツールやメカ制御ツールなどとのデータ連携にも対応する。
Xphereは現時点で、生産設備や工作機械の導入前の使用感を検証するシミュレーションとして活用されるケースが多いという。これらの機器は一点物で、量産機と異なり試作機を作らないことも多い。このため、顧客要望による導入後の改修といった手戻り作業が多く発生するが、仮想空間内での検証を通じてこうした手間を減らす。
この他、2D図面を基にした生産設備のレイアウト設計の検証などにも用いられているという。作業者の動線や目線に合わせた設備配置がなされているか、不要な動作が発生しないかを確認して改善に役立てる。
デジタルプロセス 3D技術ビジネス部 部長の鎌田聖一氏は「Xphereは実機を仮想空間内で実物大で再現するため、今まで現実空間でしかできなかった検証作業に適用しやすい。製造業にとっては非常に大きなポイントだ」と説明する。
最新版のV1.7では組み立て業務における検証機能を強化した。「COLMINA デジタル生産準備 VPS MFG」と連携することで、VR-HMD装着者は組み立てアニメーションを仮想空間内で体験できるようになる。従来、組み立て作業者はディスプレイ上で組み立てのアニメーションを見て練習した上で、業務に取り組んでいた。仮想空間で実物大のアニメーションを体験することで、業務理解をより深められると見込む。
また、無線タイプのVR-HMD「Meta Quest2」のサポートも開始した。従来は有線タイプのVR-HMDを使用していたが、装着者が動ける範囲が限定される上、室内にセンサーなどを設置する手間もかかるなどの課題があった。無線タイプであれば仮想空間内で高い自由度で動ける。
鎌田氏は「解像度やリフレッシュレートの点などで優れる有線タイプのみ採用していたが、性能よりも自由度の高さを重視する顧客も少なくなかった。また、VRを製造過程に取り入れている企業は有線/無線タイプをどちらも導入しているケースが少なくない。Xphereの利用企業の大半は有線タイプを使っているが、アップデートに合わせて無線タイプを購入しようと考えているという声も聞いている」と説明する。
この他に、ネジやボタンなど細かい部品をつかみやすくするなどのアップデートを行った。現場点検や製品保守などの手順をトレーニングするといったニーズに、より応えやすくなったという。
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