この記事は、2023年2月16日発行の「モノづくり総合版 メールマガジン」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。
中身がよく見えず、見える範囲に異常がないと、「きっと大丈夫だろう」と思い込みたくなります。
例えば、お餅。真空パックではないつきたてのお餅の場合は、きちんと保管しないと簡単にカビが生えてしまいます。そのため、お正月を過ぎた辺りになると「お餅のカビは表面だけ削り取っても意味がない、目に見えなくてもカビの根は奥まで伸びている」といった注意喚起を見かけます。その一方で、カビている範囲を削って食べちゃう人も一定数いるようです。
お餅に限らず、食べ物が変色しているとかニオイや手触りがいつもと違うとか、明らかな異常があれば判断しやすいですが、そうでない限りはなんとなく大丈夫な方に賭けたくなります。食べ物がもったいないからでしょうか。それに加えて、「明らかな異常がないのであれば、大したダメージは受けないんじゃないか」と考えるのも要因かもしれません。よく火を通せばなんとかなる……と思って、鮮度が多少怪しい食品を食べちゃう場面に心当たりがある人もいらっしゃるでしょう。
栄養や食品管理を学んだプロでもなく、よく知らないのに、今まで大きな食中毒や体調不良が起きなかったから「今回もきっと大丈夫」と楽観視する。これは生活の知恵というか経験と応用に基づいているので否定しません。しかし、個人的な経験則だけで「きっと大丈夫だろう」と済ませてはいけないことも中にはあります。リチウムイオン電池もその1つではないでしょうか。
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