生産現場で機械設備を使用している作業者が毎日のように行う日常点検や給油、機械設備の清掃も予防保全の一つといえますが、それらの中でも特に重要な機械設備については、設備の保全部門の検査員に点検や検査を依頼する必要があります。例えば、各工場でよく行われている特別PM(Preventive Maintenance)機械設備がこれに当たります。この特別PM機械設備の選定は、一般的に次のような設備について行った方がよいとされています。選定に当たっての参考にしてください。
以上の内容について、生産形態や機械設備の状況に合ったPM機械設備の選定を保全部門や生産技術部門などで行います。しかし、PM機械設備に選定された場合でも、その機械設備について全て保全部門が責任を負うかというと決してそういうことではなく、これを正常な状態に保つ大半の責任はあくまでも毎日使用する生産現場部門、特に管理監督者が責任を持たなければなりません。
機械設備の保全の目的は、結局は最小限の費用で最大の効果を上げようとすることといえます。また、機械設備の点検は、そのための有力な手段ですが、このような考え方に立脚すると、これを最も効果的に行うために、経済的な点検周期を決めなければなりません。
例えば、1台の機械設備についての点検周期も、ある部分は毎日、別の部分は月に1回というように必要にして十分な効果が期待できる周期が設定されることが重要です。そのとき、並行して設定する点検要領や判定基準などは、簡潔に記述して確実に実施内容を示すようにすることが肝要です。以下に、点検や検査を設定する際の留意事項などについて挙げておきました。
日常点検の項目としては、機械の異常音、操作時の動きの状態、適正な注油の状態、異常振動などの機械の運転に取り掛かる前に日々確認すべき項目と、温度上昇などのように連続運転中に行うべき点検項目があります。さらに、治工具類の作業開始前の点検も日常点検として重要な項目です。
以上の項目は、機械設備や治工具を毎日のように使用している作業者あるいは管理監督者の長年の経験に基づく勘に頼るところが大きい場合もあります。しかし、勘や経験は大切なことではありますが、これを他人に伝えることは非常に難しいことなので、できる限り長さや温度、速度などというような数値に置き換える努力もまた大切です。
天井クレーンやボイラー、高圧ガス設備などのように危険を伴う設備に対しては、安全を確保する上でも法令や規則に定められている内容が多く、これらについては摩耗の程度、腐食の度合などについて月例点検もしくは規則に定められた点検に従って行わなければなりません。
その他、必要に応じて週に1回または年に1回といった、定められた周期に従って点検を行い、判定基準に基づいて記録して、不具合が見つかった場合は、その対策を行う必要があります。
工作用の機械設備などにおいては、精度低下の兆候を監視するために、必要に応じて精度検査を行って、その状態を把握する必要があります。精度検査の方法は、JIS(Japan Industrial Standards:日本工業規格)に定められており、これに基いて保全部門が行うのが一般的ですが、精度低下の兆候を一早く把握できるのは、機械設備を日々使用している作業者です。
これは品質管理の問題にも関連しますが、作業者自身が製造している製品の精度を管理することによって、精度が低下しつつあることを把握できるようにするのが管理監督者の任務です。この管理手法の一つとして各種の管理図があります。
予防保全の実施に当たって、日常点検や月例点検、定期検査、精度検査などを作業標準通りに行うため、また、その時の状況を記録して後に活用するために点検表を作成する必要があります。
点検表は、新規に機械設備を購入する際に保全部門や生産技術部門で作成すべきものではありますが、特殊な機械設備を除き、一般的な機械設備については、その勘所を知り尽くしている現場の管理監督者が作業者と協力して作成する場合も多くあります。
保全部門の機械設備の点検や検査が終了すると、その結果として、保全部門から合格、警告などの処置が該当職場へ通知されます。
以下に述べる保全部門の機械設備の点検や検査結果に基づく処置内容の指示に対して、対象現場の管理監督者は、自職場内の管轄する作業工程、あるいは機械設備の故障の緊急度合などを十分に把握して、該当機械設備の使用禁止を全員に徹底したり、修理の時期を決定したりといった何らかの対策を速やかに決定していかなければなりません。また、対策の決定に当たっては、必要に応じて上司の判断を仰がなければならない場合もあります。代表的な処置通知の内容は次の通りです。
設備保全は、あくまで経済性を無視しては成立しませんので、機械設備の保全結果の記録を整理して、果たして効果的であったか否かを確認しなければなりません。当然のことながら、この評価作業は、保全部門や生産技術部門などのスタッフ部門の行うべき任務ではありますが該当職場の管理監督者としての立場で、その効果の測定ということに対して無関心であってはなりません。
そのためには、各職場にあらかじめ予算化された機械設備の修理費などの費用の範囲内で、いかに機械設備を有効に活用し、稼働率を高めるかを常に考えて取り組んでいかなければなりません。
企業競争に打ち勝つために、機械設備はますます近代化されていくことが考えられます。従って、今日の最新鋭の機械設備でも、精度の維持や精度の向上への努力を怠っていれば、最新鋭の機械設備の水準からは遠く離れて行き、精度の低下は製品の品質低下にもつながり、ひいては企業競争から脱落していく結果となってしまいます。そのことが積み重なっていけば、市場からの退場に追い込まれてしまうことだってあり得ます。だからこそ、現場の管理監督者は、常に精度の維持とその向上を念頭に置いておく必要性が生じてくるのです。
機械設備のそれぞれの精度を把握し、その結果に応じて計画的な精度更生能力の向上を図っていく行動が必要となってきます。機械設備の更生修理の時期については各企業で異なっていて、ー定の基準はありません。各企業の実情に即した時期を選ぶべきであると考えます。
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