回復基調は継続するか、日系乗用車の世界生産は6カ月ぶりに前年割れ自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)

着実な回復基調を示していた自動車生産に陰りが見え始めた。2022年11月の自動車生産は、日系乗用車メーカー8社合計の世界生産台数が6カ月ぶりに前年割れとなった。

» 2023年01月26日 06時00分 公開
[MONOist]

 着実な回復基調を示していた自動車生産に陰りが見え始めた。2022年11月の自動車生産は、日系乗用車メーカー8社合計の世界生産台数が6カ月ぶりに前年割れとなった。

 半導体不足は徐々に緩和されている様子が伺えるものの、中国の「ゼロコロナ政策」により中国国内での生産停止に加えて、サプライチェーンにも影響が及び、部品調達に支障を来す格好となった。中国では市民の強い反発などにより従来の規制から一転し、2022年12月からゼロコロナ政策を緩和。自動車関連産業も回復が見込まれている。ただ、依然として車載向け半導体不足の状況は続いており、自動車生産がどの程度回復するかは不透明な情勢だ。

 日系乗用車メーカー8社が発表した2022年11月の世界生産台数の8社合計は、前年同月比4.3%減の210万8683台で、ホンダ、日産自動車、マツダ、三菱自動車の4社が前年実績を下回った。11月の生産実績の内訳を見ると、同じ地域でもメーカーによって状況が異なっており、懸案である部品調達に苦慮している様子が伺える。

2022年11月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 266,174 566,930 151,308 151,539 833,104
▲ 3.3 3.8 5.9 ▲ 11.1 1.5
ホンダ 72,129 253,867 103,385 94,582 325,996
8.6 ▲ 16.7 ▲ 12.6 ▲ 30.1 ▲ 12.2
スズキ 88,333 183,236 - - 271,569
4.7 5.0 - - 4.9
日産 56,613 192,348 72,866 48,002 248,961
42.2 ▲ 32.0 ▲ 19.1 ▲ 59.5 ▲ 22.8
ダイハツ 84,283 77,092 - - 161,375
4.9 18.4 - - 11.0
マツダ 68,399 35,127 17,939 5,944 103,526
▲ 11.9 6.0 70.5 ▲ 67.9 ▲ 6.5
三菱 33,732 48,988 - 1,465 82,720
▲ 8.5 ▲ 16.6 - ▲ 80.0 ▲ 13.5
スバル 56,985 24,447 24,447 - 81,432
9.8 ▲ 5.2 ▲ 5.2 - 4.8
合計 726,648 1,382,035 369,945 301,532 2,108,683
2.0 ▲ 7.3 ▲ 4.5 ▲ 34.9 ▲ 4.3
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

 このうち海外生産は前年同月比7.3%減の138万2035台と低迷し、7カ月ぶりにマイナスへ転じた。中でもゼロコロナ政策の影響を受けた中国は同34.9%減と大幅に減少し、2カ月連続のマイナス。中国で生産する5社全てが2桁パーセント減となった。北米も振るわず、同4.5%減と4カ月ぶりに前年実績を下回った。

 一方、国内生産は前年同月比2.0%増の72万6648台で、4カ月連続のプラス。前年が東南アジアのロックダウンによる部品調達難の影響があったことや、半導体供給が改善していることがプラスに働いた。

トヨタ

 メーカー別に見ると、トヨタ自動車の11月のグローバル生産台数は、前年同月比1.5%増の83万3104台と4カ月連続で前年実績を上回り、11月の世界生産として過去最高を更新した。ただ、トヨタは当初の11月の生産計画では85万台としており、半導体不足などを理由に10月には80万台へ下方修正していた。

 海外生産は、前年同月比3.8%増の56万6930台と7カ月連続のプラス。11月の海外生産としては過去最高を更新した。地域別では、北米は前年が東南アジアからの部品供給不足で稼働調整を実施したことにより同5.9%増と4カ月連続で増加。欧州も同5.6%増、中南米も同6.7%増とプラスを確保した。

 一方、中国はゼロコロナ政策により同11.1%減と7カ月ぶりにマイナスへ転じた。2桁パーセント減だが、中国で生産する日系5社では最小の減少幅にとどめた。中国以外のアジアは、タイが同27.1%増、インドネシアが同10.0%増、インドが同61.8%増など、主要拠点がそろって好調に推移した結果、アジアトータルでは同1.3%増と中国の落ち込みをカバーした。

 国内生産は、前年同月比3.3%減の26万6174台と4カ月ぶりのマイナスだった。半導体不足により8工場11ラインで稼働を停止。人気車種のミニバン「ノア/ヴォクシー」を生産するトヨタ車体富士松工場(愛知県刈谷市)は9日間の稼働停止を余儀なくされるなど、国内販売では納期の長期化が深刻化している。

ホンダ

 ホンダの11月のグローバル生産台数は、前年同月比12.2%減の32万5996台で6カ月ぶりにマイナスへ転じた。中でも海外生産が同16.7%減の25万3867台と大きく落ち込み、2カ月ぶりに減少した。

 これは最大市場の中国が同30.1%減と低迷したことが要因だ。ゼロコロナ政策の影響で武漢工場の操業を2日間停止し、3カ月連続のマイナスとなった。その結果、アジアトータルでも同19.1%減と3カ月連続で前年実績を下回った。北米も同12.6%減と2桁パーセント減と振るわず、4カ月ぶりにマイナスへ転じた。

 海外が厳しい一方で、国内生産は回復している。前年同月比8.6%増の7万2129台と2カ月ぶりに前年実績を上回った。国内の主要2工場は部品調達難で7月から稼働調整を余儀なくされていたが、11月は通常操業に戻していた。ただ、12月には埼玉製作所の稼働率を計画比8割に調整するなど、依然として不安定な状況が続いている。このため「ステップワゴン」や「ヴェゼル」など人気車種は納期が半年以上に長期化している。

スズキ

 好調なのがスズキだ。11月のグローバル生産は、前年同月比4.9%増の27万1569台で、5カ月連続で増加。コロナ禍前の2019年11月との比較でも2.4%上回っている。8社のグローバル生産では日産を上回り3位となった。このうち海外生産は同5.0%増の18万3236台と、5カ月連続のプラスだった。主要拠点のインドは、前年の反動増などにより同4.9%増を確保し、5カ月連続の増加。インド以外の海外生産も同5.5%増と3カ月連続で増加した。

 国内生産も前年同月比4.7%増の8万8333台と7カ月連続のプラスだ。前年が半導体不足で実績が低かったこともあり、増加傾向が続いている。ただ、半導体の供給が足りていない状況は続いており、2019年11月と比較すると0.6%減と伸び悩んでいる。

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