自動車生産の回復基調が続いている。2022年10月の自動車生産を見ると、日系乗用車メーカー8社合計の世界生産台数は5カ月連続で増加しており、半導体をはじめとした部品の供給不足が徐々に緩和されている様子が伺える。
自動車生産の回復基調が続いている。2022年10月の自動車生産を見ると、日系乗用車メーカー8社合計の世界生産台数は5カ月連続で増加しており、半導体をはじめとした部品の供給不足が徐々に緩和されている様子が伺える。一方で、コロナ禍前の2019年10月との比較では、11%減という実績であり、本格回復とは言い難い。自動車メーカー各社は2022年度後半の挽回生産を計画しているものの、当初の計画と比べて下方修正せざるを得ない状況となっており、部品供給不足の影響が長引いていることが分かる。
日系乗用車メーカー8社が発表した2022年10月の世界生産台数の8社合計は、前年同月比14.4%増の211万3511台で、日産自動車と三菱自動車が前年実績を下回った。国内生産は同36.1%増の65万5459台で、3カ月連続のプラス。前年10月は、ベトナムとマレーシアのロックダウンによる部品調達難で各社が稼働を停止しており、反動増による影響が大きい。海外生産は同6.7%増の145万8052台と6カ月連続で増加した。北米が同8.0%増と3カ月連続で増加した一方、中国は同1.4%減と5カ月ぶりにマイナスへ転じた。
国内 | 海外 | (うち北米) | (うち中国) | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
トヨタ | 203,149 | 568,233 | 163,511 | 159,445 | 771,382 |
33.7 | 19.5 | 16.2 | 18.4 | 23.0 | |
ホンダ | 48,907 | 281,095 | 101,581 | 131,909 | 330,002 |
▲ 1.0 | 1.5 | 14.9 | ▲ 4.8 | 1.1 | |
日産 | 58,441 | 239,360 | 84,991 | 94,876 | 297,801 |
92.9 | ▲ 12.9 | ▲ 16.3 | 1.0 | ▲ 2.4 | |
スズキ | 83,293 | 184,044 | - | - | 267,337 |
9.2 | 16.5 | - | - | 14.1 | |
ダイハツ | 86,448 | 73,801 | - | - | 160,249 |
61.0 | 6.8 | - | - | 30.5 | |
マツダ | 73,704 | 38,046 | 18,474 | 9,619 | 111,750 |
109.6 | 25.1 | 63.5 | ▲ 39.9 | 70.4 | |
スバル | 60,438 | 28,019 | 28,019 | - | 88,457 |
65.3 | 10.9 | 10.9 | - | 43.1 | |
三菱 | 41,079 | 45,454 | - | 1,917 | 86,533 |
▲ 15.0 | ▲ 19.8 | - | ▲ 75.1 | ▲ 17.6 | |
合計 | 655,459 | 1,458,052 | 396,576 | 397,766 | 2,113,511 |
36.1 | 6.7 | 8.0 | ▲ 1.4 | 14.4 | |
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、% ※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計 |
メーカー別に見ると、トヨタ自動車の10月のグローバル生産台数は、前年同月比23.0%増の77万1382台と3カ月連続で前年実績を上回った。トヨタは当初の生産計画で10月は80万台としており、半導体不足などを理由に75万台へ下方修正していた。
このうち国内生産は、前年同月比33.7%増の20万3149台と3カ月連続のプラス。ただ、これは前年10月が低迷した反動増の結果で、半導体不足による稼働停止が続いており、国内販売では多くの車種で納期が長期化している。実際にコロナ禍前の19年10月との比較では26.5%減という実績であり、本格回復には程遠い状況だ。
一方、海外生産は力強い回復を見せている。前年同月比19.5%増の56万8233台と6カ月連続のプラス。国内生産より伸び率は低いものの、10月の海外生産としては過去最高を更新した。地域別では、北米は前年が東南アジアからの部品供給不足で稼働調整を実施したことに加えて、生産能力の増強や最適化により同16.2%増と3カ月連続で増加。中国も北米同様に前年の反動や生産能力の増強などにより、同18.4%増と6カ月連続のプラスだった。
アジアは中国以外でも前年のコロナ禍によるロックダウンや稼働停止などの反動により、ベトナムで同2.8倍となった他、主要拠点のタイが同13.8%増、インドネシアが同43.6%増と、軒並み好調に推移した結果、アジアトータルでは同20.8%増と伸長した。
ホンダの10月のグローバル生産台数は、前年同月比1.1%増の33万2台で5カ月連続のプラス。海外生産は、同1.5%増の28万1095台と2カ月ぶりに増加した。北米が同14.9%増とけん引し、3カ月連続のプラスだった。一方で、生産台数最多の中国が同4.8%減と伸び悩み、2カ月連続のマイナスとなった。その結果、アジアトータルでも同3.0%減と2カ月連続で前年実績を下回った。
国内生産も振るわない。前年同月比1.0%減の4万8907台で3カ月ぶりにマイナスへ転じた。部品調達難で大幅減産を余儀なくされた前年10月を下回る水準で、埼玉製作所寄居工場では計画比4割減の稼働にとどまっており、半導体不足が大きく響いた。このため人気車種の「ステップワゴン」や「ヴェゼル」などは納期が半年以上に長期化している。
スズキの10月のグローバル生産は、前年同月比14.1%増の26万7337台と、4カ月連続で増加した。海外生産は同16.5%増の18万4044台と、4カ月連続のプラスだった。主要拠点のインドは、前年の反動増などにより同15.9%増と増加し、4カ月連続のプラス。インド以外の海外生産も同20.2%増と2カ月連続で増加した。
国内生産も前年同月比9.2%増の8万3293台と6カ月連続のプラス。前年が半導体不足により実績が低かったこともあり、増加傾向が続いている。
ダイハツ工業の10月のグローバル生産台数は、前年同月比30.5%増の16万249台と5カ月連続で増加した。大幅に増加したのが国内生産で、同61.0%増の8万6448台と急伸し、3カ月連続のプラス。これは前年10月が、半導体不足や東南アジアのロックダウンによる部品調達難で、国内主要拠点で相次ぎ稼働停止を実施したため。生産台数の増加は販売拡大にもつながり、軽自動車の販売台数が10月として過去最高を更新。主力商品の軽自動車が台数を伸ばしたことで、グローバル販売台数も10月の過去最高記録を塗り替えた。
海外生産も好調が続いている。前年同月比6.8%増の7万3801台と15カ月連続でプラスを確保。マレーシアは前年割れとなったものの、インドネシアは同29.4%増と高い伸びを見せた。インドネシアは販売も好調で、10月として過去最高を記録している。
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