コオロギが世界の食料危機を救う、生産量拡大へスマート飼育の実証実験開始FAニュース(2/2 ページ)

» 2023年01月20日 13時00分 公開
[長沢正博MONOist]
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最適な飼育環境のデータ収集と自動制御を目指す

 NTTe-City Labo内の飼育施設では「5〜10万匹」(市橋氏)を飼育し、コオロギの飼育と密接な関わりを持つ飼育室内の温度や湿度、CO2濃度をはじめとした環境データをセンサーによって収集する。これらのデータを基に、センサーと飼育室内の各種電子機器をHEMS(Home Energy Management System)によって可視化および一元管理を行い、自動制御によってコオロギにとって最適な環境の実現を目指す。

NTTe-City Labo内の飼育施設の様子[クリックで拡大]出所:NTT東日本

 また、画像認識AI(人工知能)を用いて、各種センサーより収集したデータを分析、コオロギの飼育環境内で発生した異常やその原因の検知、コオロギが食べた餌の量の測定などを行うことで、飼育方法のさらなる向上や、各種コストおよび工数のスリム化に取り組む。またここで得られた分析結果を、自動給餌などの高度な飼育方法の開発につなげる。

NTTe-City Labo内の飼育施設内に並ぶ飼育ケース飼育ケース内部の様子 NTTe-City Labo内の飼育施設内に並ぶ飼育ケース(左)と、飼育ケース内部の様子(右)[クリックで拡大]出所:NTT東日本

 NTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当課長の篠原弘明氏は「最適な環境でコオロギを飼育するための餌や水の量をセンサーによって正確に測ることがスタートになる。室内の照明の照度が固体の飼育速度にどんな影響を与えるのかなども共同研究していきたい。給餌、給水に関しても自動制御する仕組みを作っていきたい」と語る。

 グリラスは2019年に設立された。社名のグリラスは、フタホシコオロギの学術名である「Gryllus bimaculatus」に由来している。創業者で代表取締役 CEO 兼 CTOの渡邉崇人氏は徳島大学大学院社会産業理工学研究部で助教を務めており長年コオロギを研究している。

 グリラスでは現在、年間25tのコオロギから5tのコオロギパウダーを生産、これまでに同社生産のコオロギパウダーを使ったせんべいやチョコレートが無印良品で販売されている。また、生産拠点の美馬ファームと研究拠点の美馬研究所(いずれも徳島県美馬氏)は廃校した小学校の校舎を転用している。

グリラスのこれまでの歩み グリラスのこれまでの歩み[クリックで拡大]出所:グリラス

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