食用コオロギの生産から商品開発、販売まで行う徳島大学発のベンチャー企業グリラスとNTT東日本は、IoT(モノのインターネット)機器などを活用した食用コオロギのスマート飼育に向けて実証実験を開始すると発表した。
食用コオロギの生産、加工から商品開発、販売までを行う徳島大学発のベンチャー企業グリラスとNTT東日本は2023年1月19日、IoT(モノのインターネット)機器などを活用した食用コオロギのスマート飼育に向けて実証実験を同月から開始すると発表した。最新技術の実証、体感施設「NTTe-City Labo(東京都調布市)」に食用コオロギの飼育施設を設け、まずはコオロギの飼育における環境要因のデータ収集および分析を行う。
現在、約80億人の世界の人口は、2050年には約100億人まで増加することが見込まれている。それに伴い、増え続ける人口を養う食糧の確保が課題となってくる。特に動物性タンパク質の不足は顕著で「タンパク質危機」と称される。
牛肉や豚肉、鶏肉などの畜産には餌となる大量の穀物が必要になる。タンパク質の需要の拡大に比べると、穀物供給量の伸びは限られており、2025年から2030年にかけてタンパク質の需要と穀物供給バランスが崩れる、タンパク質危機が起こるとみられている。食料不足が懸念される中で、各国で日々大量の食品が廃棄されているアンバランスも起きている。世界では年間約9.3億tの食品ロスが発生しており、その量は全世界で生産されている食品の約3分の1に相当するという。
これらの問題の解決策の1つとして食用コオロギが期待されている。コオロギは豊富なタンパク質に加え、亜鉛、鉄分、カルシウム、マグネシウム、ビタミン、オメガ3といった体に必要な栄養素を数多く含んでいる。また、豚や牛、鶏に比べて餌や水の必要量が少なく、温室効果ガスの排出量が低い。さらに雑食のため農業残渣や加工残渣を活用できる上、おとなしいため広い土地も必要としないという特色がある。グリラスでも食品ロス由来の独自配合飼料を使用している。同じ昆虫でもバッタは草食で新鮮な草が要り、さらに飛び回るため狭い室内での飼育は難しいという。
ただ、コオロギは大量養殖に最適化された飼育方法が確立されていない。グリラス 生産本部長の市橋寛久氏は「飼育員が飼育ケースを1つずつ取り出して、餌や水の交換、掃除を行っており、人海戦術になっている。餌の量も人によってばらつきが生じている。また、室温を30℃に保つ必要があるが、それも飼育員が部屋の温度表示を見ながらエアコンの設定を都度変更しており、経験に頼った温度管理になっている。それらをNTTとの協業によってIoT技術を導入し、効率的な仕組みに置き換えていきたい」と語る。
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