自動車業界のWebマーケティング戦略 新規顧客獲得には何が必要か間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(11)(2/4 ページ)

» 2024年01月16日 10時00分 公開

自社技術を生かした新市場開拓が難しい理由

 サプライヤーの異業種への新規開拓が難しい理由を3つの視点から説明する。

顧客:下請け構造による問題

(1)立場上、足元を見られやすい
 案件獲得のためのアプローチをかけても、メーカー側にはすでに旧知の加工業者が存在する。切り替えにはリスクが伴うため、明確なメリットがない限り、新しい加工業者には依頼しない。そのため、「大幅なコスト削減があれば検討する」という程度で終わることが多い。

(2)発注のタイミングが捉えづらい
 既存業者が加工不可やキャパオーバー、不具合を起こした場合など、新規の加工業者を探すタイミングはイレギュラーで発生する。そのタイミングは密に連絡を取っていない限りは、外部から知ることはできない。

競合:技術営業に特有の問題

(1)技術は製品と比べて伝えづらい
 「製品」はなにかしらの用途で利用するために開発されている。そのため、利用上のメリット/デメリット、価格など説明する内容を、顧客の利用シーンに合わせて提案できる。
 一方で、「技術」は用途が限定されず、同じ案件というものはほとんど存在しない。図面や数量、納期によって提供できる価格は異なる。そのため、顧客が求めるものを探りながら、それに合わせた提案をする必要がある。

(2)他社技術との差別化が難しい
 加工業者の保有する設備に自社オリジナル加工機というものはほとんどなく、汎用性の高い工作機械を使って加工している。そのため、最新式だったり海外製のハイスペック機を備えていたりと、特徴がある機械はあるものの、ほとんど同じような加工機で多くの会社が競っている。
 工具や治具、加工条件などのノウハウを持っていても、ユーザーに競争優位性を説明できるような数字で示すことは非常に難しい。「依頼されたものをいかに正確に納期通りに作るか」は得意だが、顧客の欲しいものを推測し、必要な条件を提案することは苦手という会社も多い。

(3)価格勝負になりやすい
 図面通りのものを求められるため、付加価値を持たせづらい。納期厳守、品質管理は当然となるため、価格面での比較競争になりやすい。これに関しては、自動車業界で長年培ってきたコスト競争力が強みになる可能性はある。異業種の市場はボリュームの確保に課題はあるものの、価格面は魅力的に感じることは多いだろう。

自社:保有するリソースの問題

(1)技術知識と営業スキルを兼ね備えた営業人材が少ない
 工場の経験を積んだ営業人材が欲しい。そうした人材ならば単なる御用聞きではなく、図面を理解した上での提案や、やりとりがスムーズにできる。だが、そのような人材を新たに採用するのは非常にハードルが高い。社内で工場から営業へ転属させても、営業業務への適性の問題もある。

(2)自社が保有する設備以上の案件は受けられない
 どんなに良い案件があっても、設備の稼働が目いっぱいでは仕事を受けることはできない。需要があればあるだけ作ればよい、という製品販売とは違い、設備稼働率という制限がある。協力工場との連携でカバーする手段もあるが、その場合は協力工場と良好な関係を作り、協力工場の稼働状況なども把握する必要がある。

(3)営業と工場にあつれきが生じやすい 営業側が努力して案件を獲得しても、工場側は新しい案件への抵抗などから非協力的なケースがある。例えば、量産前提で組まれていた作業ラインの中に、小ロットの案件や試作などを入れることは非常に手間がかかるため、現場は良い顔をしない。

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