日本精工(NSK)は2022年12月23日、再生医療製品の開発を行うベンチャー企業のサイフューズと、再生/細胞医療製品分野における新技術の開発で協創することを発表した。
日本精工(NSK)は2022年12月23日、再生医療製品の開発を行うベンチャー企業のサイフューズと、再生/細胞医療製品分野における新技術の開発で協創することを発表した。
NSKは、今後、EV(電気自動車)へのシフトなどから、自動車に搭載されるベアリングの減少が見込まれており、新商品の開発が必須となっている。そこで、NSKの新領域商品開発センターでは成長市場へのマーケティングを進めており、再生医療機器領域やサービスロボット領域に着目して成長市場に向けた新商品開発を手掛けている。今回のサイフューズとの共創は、この再生医療機器領域に関する取り組みの一環となる。
NSKは2008年に医療、バイオなどの業界向けに細胞操作など微細なマニュピレーションシステムを開発し、その後も改良を続けている他、武田薬品工業が設立した「湘南ヘルスイノベーションパーク」に入居、社内にも細胞培養の設備を立ち上げ、再生医療領域の研究を続けている。
自分の身体から採取した細胞を培養して、病気や事故で失われた体の組織を再生し、元の進退に戻す再生医療は、これまで根治が難しかった疾患を治療し得る技術として世界的に注目され、市場も急速に拡大している。2030年にはグローバルの市場規模が7兆5000億円になると予想されている。
その中で、サイフューズは独自のバイオ3Dプリンタを用いた3D細胞製品の実用化を目指しており、既にバイオ3Dプリンタ「レジェノバ(Regenova)」「スパイク(S-PIKE)」の開発に成功している。
NSK 技術開発本部 新領域商品開発センター所長の小林誠一氏は「未来のニーズをとらえ自社の強みを生かして新たな領域へ踏み出すことが重要だ。社会はこれまでにないスピードで変化し、新たな市場ニーズが生まれている。サイフューズは再生医療領域におけるトップランナーであり、われわれが参入するにあたってノウハウを持っている。細胞の大きさは20μm、細胞が集まった細胞塊で500μmとされ、それくらい微細で柔らかい対象のモーションコントロールに挑戦したい」と語る。
サイフューズ 取締役 システム開発部長の徳永周彦氏は「NSKはメカトロ技術、位置決め技術、画像認識の技術、そしてそれらをシステムインテグレートする技術を持っている。われわれの事業は細胞の塊、細胞塊をベースに大きな組織、臓器を臨床製造する技術をベースにしており、今後の商業化、産業化のために必要な新しい設備、技術の開発を見据えて協業させていただいた」とNSKとの共創に期待を寄せる。
サイフューズは、脳梗塞の治療に培養した幹細胞を液体で投与するタイプなどを1D細胞、火傷の治療で再生した皮膚を移植するタイプなどを2D細胞、血管や臓器などを3D細胞と位置付けており、NSKはこの3D細胞製品の開発に、メカトロ技術および精密位置決め技術で協力する。
徳永氏は「他の分野と違ってワークが一定の形状、寸法をしておらず、取り扱いもセンシティブだ。それをハンドリングするにあたって新しい技術やノウハウが必要になってくる」と語る。小林氏は再生医療はまだ手作業が多いとし、「自動化を進めて、機械でないとできない取り組みを進めていくことも今回の共創の趣旨でもある」と述べた。
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