先述したルネサスのe-AIのロードマップでは、AI処理性能の大幅な向上によりエッジで学習も可能になることを示唆していた。次世代AIアクセラレータと併せて発表したエンドポイント学習システムはその一例になるとみられる。
AIを搭載したシステムを実環境で使用する際の課題の一つとして、機器の設置場所やセンサーのばらつきに応じて認識精度が変わってしまうという問題があった。これを解決するには、装置が設置される環境で、AIモデルのニューラルネットワークの一部を再度学習させる追加学習が有効になる。これまで追加学習はクラウド上で行うのが一般的だったが、実環境におけるクラウドとの通信環境の確保やプライバシーの問題、学習サーバのコスト増などが課題になっていた。
これに対して、エンドポイント学習システムを使えば、DRP-AI内でAIモデルの実行と追加学習を同時並行で行えるのであらためてクラウドと接続する必要がない。現場の動作環境やタスクの変化に自律的に適応していくエッジでの学習システムを構築できるようになる。AIモデルの実行と追加学習を並行できるので、AIの実行を止めずにバックグラウンドで学習を行い、追加学習のための時間の確保やデータ収集の手間も不要になり、運用が容易になる。機器の設置場所やセンサーのばらつきによらず、リアルタイムで応答する高精度なエッジAIの実行が可能になるという。
なお、今回の開発は、NEDOが2018〜2022年度に実施している事業「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」の下で行われ、ルネサスの他、東京工業大学、SOINN、三菱電機との連携による成果となる。
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