広がる産業用メタバース、マイクロソフトの製造向けトップが語る日本の底力製造業DX

予測不可能な変化に直面する製造業において、DXは今大きなテーマとなっている。その中で製造業のDX支援に力を入れているのがマイクロソフトだ。世界中の多くの製造業支援を行ってきた同社では製造業のDXの現状や取り組みに求められるものについてどのように映っているのだろうか。マイクロソフトで製造産業向けバイスプレジデントを務めるチャリオン・アルカン氏らに話を聞いた。

» 2022年12月09日 10時00分 公開
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 コロナ禍によるサプライチェーンの混乱やモノ不足、地政学的リスク、急速な為替の変動など、製造業を取り巻く変化は多様さを増し、スピードが速まり、影響度が高まっている。これらに対応する1つの手段として、DX(デジタルトランスフォーメーション)に注目が集まり、多くの製造業では実際に取り組みを加速させている。

 その中で「製造業のDX」をテクノロジーパートナーとして積極的に支援する方針を示しているのがMicrosoft(マイクロソフト)だ。マイクロソフトで製造産業向けバイスプレジデントを務めるCaglayan Arkan(チャリオン・アルカン)氏と、アジア太平洋地域を担当するSaj Kumar(サージ・クマール)氏、日本市場を担当する日本マイクロソフト 執行役員 常務 インダストリアル&製造事業本部長の手島主税氏に、製造業を取り巻く環境変化とDXがもたらす価値、日本市場への期待について話を聞いた。

“保守的”だった製造業はコロナ禍で一変

MONOist 現在のグローバル製造業が直面している課題をどのように捉えていますか。

photo マイクロソフト バイスプレジデント チャリオン・アルカン氏

アルカン氏 私は製造業が世界の変化を牽引(けんいん)していく存在だと考えています。何らかのイノベーションを考えても、最終的にモノとしての製品に触れないで実現できるものはありません。あらゆるイノベーションを支える存在が製造業だといえるのです。さらに製造業は、多くの従業員の雇用を守る役割も担うため、国家レベルで見ても競争力の源泉だともいえます。

 一方で製造業は、その役割の重さがあるゆえに、循環型社会や地球環境保護など人類全体に共通する課題に密接に関わることになっています。こうした人類共通課題を踏まえ、今後の製造業は「サステナブル・バイ・デザイン」といった方向に考え方を変えていくことが求められています。こうした新たな動きに対応していくには、従来通りの手法だけでは実現することが難しいことも多くなります。そこで、かつてないほど大きな領域で、DXを推進していく必要が出てきているのです。

MONOist 「日本の製造業は保守的でDXへの取り組みも遅れている」と指摘されることもあります。こうした状況をどう見ていますか。

アルカン氏 製造業が保守的だと指摘を受けているのは日本に限った話ではありません。世界中の製造業がある意味で“保守的”なのだといえます。特にコロナ禍以前は、最適化された体制の中で、製品製造を安定して行うことができれば、ビジネスが成り立っていました。そのため、工場ごとにバラバラのERP(Enterprise Resource Planning)システムやMES(Manufacturing Execution System)を採用し、それらが分断されていたとしても、変革しなければならない理由がありませんでした。

 しかし、コロナ禍でこうした状況は一変しました。グローバルのサプライチェーンが寸断し、必要な部品がいつ調達できるか分からないにもかかわらず、自社内の在庫すらも正確に把握できない状況が生まれました。工場の操業を続けるどころではなく、問題点の把握も難しい危機的な問題に直面したのです。そこで、このままではだめだと多くの製造業が気付き、DXへの取り組みに本腰が入り始めたのだと考えます。

 こうした状況は世界中の多くの製造業で同じように生まれています。日本だけが保守的だったわけではありません。むしろイノベーションの観点から見ると、日本の製造業は素晴らしいリーダーシップを持ってさまざまな取り組みを進めています。実際に、デジタル技術を活用したコネクティビティ確保やスマート製造、エンジニアリングチェーンの連携やサプライチェーンの革新など、さまざまな投資が始まっています。

マイクロソフトが目指す「テクノロジーの民主化」

MONOist こうした製造業の現状を受けて、マイクロソフトではどのように支援を進めていく考えでしょうか。

アルカン氏 マイクロソフトでは、製造業の新たな変革をテクノロジー面で支えていく存在になるつもりです。目指す姿は「テクノロジーの民主化」です。世界のどこにいても、企業規模も関係なく、誰もがテクノロジーの力を使えるようにしたいと考えています。戦略的なテクノロジーパートナーとして、デジタル技術の活用やデータの利活用を支援します。

 データの利用というと、データの主権をIT企業に奪われるのではないかという懸念もあるかもしれませんが、マイクロソフトはパートナーとしてテクノロジーを提供するということに専念しています。顧客企業はもとより、その先にいるエンドユーザーのデータをわれわれが勝手に取得して利用することは一切ありません。データの中身は顧客企業が持つ価値の源泉であり、そのIPは顧客企業のものです。決して競合となることなく寄り添えるからこそ、マイクロソフトがベストパートナーとなることができるのだと考えています。

photo 日本マイクロソフト 執行役員の手島主税氏

手島氏 「テクノロジーの民主化」について補足すると、提供するテクノロジーはデジタル技術にとどまるものではありません。マイクロソフト自身も製造業です。その中で得られたノウハウや、DXにおける社内体制の変革など、提供できるものは多岐にわたります。そういう点も強みです。

 例えば、ゲーム機(Xbox)やノートPC(Surface)など、マイクロソフト自身も製造業として、スマート製造やサプライチェーンの変革に取り組んできました。また、持続可能性の確保に向け、マイクロソフトでは現在「カーボン」「廃棄物」「水」「生態系」の4つのカテゴリーに分けてコミットメントを公表し、科学的知見に基づく施策を計画的に推進しています。そうした中で学んできたノウハウを、デジタル技術と組み合わせて提供できます。

人材育成を支援してインダストリアルメタバースに注力

MONOist 「テクノロジーの民主化」という話がありましたが、現在どのようなソリューションに力を入れているのでしょうか。

アルカン氏 マイクロソフトでは、「Microsoft Cloud for Manufacturing」に基づき、「働き方の改革」「新しいやり方で顧客とエンゲージする」「もっと俊敏な工場を構築する」「もっとレジリエントなサプライチェーンをつくる」「イノベーションを加速し新しいサービスを提供する」という5つの分野に注力してソリューションの提供を進めています。

 その中で製造業向けの支援として力を入れているのが、「働き方の改革」です。既存の労働者の働き方改革を進めるとともに、新たなスキル習得をデジタル技術で支援していきます。例えば、これからの設計者は、インダストリアルメタバースの3D空間でグローバルコミュニティーのメンバーと協力しながら設計を進めることも求められます。今までの技術に加えて、新しい技術習得を進めながら、デジタルモノづくりを実現していく必要があるわけです。

 具体的には、IT(情報技術)とOT(制御技術)をつなげてさまざまなデータを活用できる基盤を用意します。マイクロソフトでは、このデジタルプラットフォーム環境を8〜10週間で整えることを目指しています。このプラットフォームをベースとし、製造プロセスを自動化するとともにそのデジタルデータを基に、予測に基づいた生産計画やリモートからの運用継続などを実現するための仕組み作りを支援します。現実の動きがデジタル環境で再現できる「デジタルツイン化」が進めば、市場から受け取ったシグナル(変化の兆候)からシミュレーションによる予知を行うことが可能となります。これらを購買や生産に生かしていくデジタルループを構築できます。

 同様に設計領域に向けても、あらゆる設計を動的かつ回数の制限なくシミュレーションできるデジタル環境を実現します。これにより市場の変化の他、さまざまな環境規制などにも柔軟に対応したモノづくりが可能となります。

photo デジタルツインがもたらす価値とポイント[クリックで拡大] 提供:マイクロソフト

MONOist マイクロソフトでは「インダストリアルメタバース」というキーワードを強く発信していますが、どういうことを目指しているのですか。

アルカン氏 インダストリアルメタバースは「デジタルツイン+α」のテクノロジーを使って物理環境のレプリカを作り、アバターやMixed Reality(MR、複合現実)技術などを組み合わせて業務におけるコミュニケーションを行うものです。製造業におけるスキルシフトを推進するためには、それぞれの業務プロセスをシンプル化し、技術の習得のハードルを下げ、教育時間の短縮を実現していく必要があります。そのためにメタバースのような環境を産業内で活用する動きはさらに広がりますし、その基盤上でのコミュニケーション手段やリアリティーを感じるような技術もさらに進化すると考えています。

 まだ、未来の技術のように思われるかもしれませんが、既に一部で実用化が進んでいるものです。マイクロソフトでは、川崎重工業様とインダストリアルメタバースの構築に向けた取り組みを進めており、DMG森精機やパナソニック ホールディングス、ソニーグループといった日系製造業ともグローバルでさまざまな分野での取り組みも進めてきています。

手島氏 1つの例を挙げるとすると、北海道電力ではMicrosoft HoloLens 2やAzure Spatial AnchorsなどマイクロソフトのMR(複合現実)ソリューションを活用した巡視点検アプリケーションを開発し、火力発電所での巡視点検支援を進めています。MRを活用して巡視ルートや点検内容を明確にすることで、効率的な技術継承に加えて、技術レベルの標準化を進めています。

 メタバースというとあらゆるデータを盛り込み巨大なメタバース空間を構築しないと意味がないと考えがちですが、まずはフィールドサービスから利用を始めて、段階的に広げていくというような動きが現実的だと考えます。業務単位でメタバースを活用できるスペースを作りそれをつないでいくことで、最終的に1つの世界に統合するという流れで進むと見ています。製造業でも今後加速的に広がっていくと見ています。

photo マイクロソフトが提供するデジタルツイン&メタバース基盤[クリックで拡大] 提供:マイクロソフト

日本の製造業には変革への大きなポテンシャルとエネルギーがある

MONOist 最近日本では産業における悲観論が広がっているように感じますが、DXを進めることで日本の製造業もまだまだ成長していける可能性があると見ていますか。

アルカン氏 もちろんです。日本の製造業はこれまで何度もイノベーションを繰り返してきました。さらに、卓越したエンジニアリングのノウハウを持っています。これは海外から見ても、本当に素晴らしいことです。だからこそ、エコシステムやサプライチェーン、バリューチェーンの再構築を含めたDXによって新しい世界が広がると見ています。日本の製造業は実際に変革を実行していくことができる非常に大きなポテンシャルとエネルギーを持っていると強く思っています。

手島氏 別の観点から見ても、日本の製造業は工作機械(NCマシン)の売上高や産業用ロボットの稼働台数、スマートファクトリーの運用規模などにおいて、いずれも世界トップクラスの地位を確保しています。モノづくり大国であるということは変わらないわけです。こうした製造業のDXを後押しして、さらなる成長を支えていくということがマイクロソフトの日本における大きな役割だと考えています。

 最終的にイノベーションは“人中心”でなければ起こすことはできません。機械にできるところは自動化をどんどん進め、人が触れ合う環境やデータをより使いやすく、便利に、クリエイティブなものにしていく。こうした全ての仕組みを支えることができるという点がマイクロソフトの強みだと考えます。ユーザーが毎日触れるアプリケーションからコミュニケーションツール、ワークフロー、ビジネスプロセス、多様なシステムの連携まで、全てをカバーできる企業はマイクロソフト以外にありません。日本の製造業と共にオープンで透明性の高いエコシステムを作り、デジタルテクノロジーを駆使して新たな価値構築を目指します。

photo 左からクマール氏、アルカン氏、手島氏

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2022年12月24日

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