広がる製造現場のロボット活用、実装と保全の負荷低減に必要なもの産業用ロボット

製造現場でのロボット活用ニーズは高いが、実装や保全の負荷が高く導入拡大への課題となっている。これらを解決するためデンソーウェーブが新たに展開を開始したのが、ロボット活用プラットフォーム「DENSO Robotics Cloud」である。

» 2021年02月15日 10時00分 公開
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 人手不足やグローバル化、少量多品種化などのニーズ変化に合わせて製造現場への負荷は高まり続けている。こうした中で人手による負荷を低減し、活用領域が広がっているのがロボットである。従来のロボット活用は自動車分野の溶接領域などが中心となっていたが、組み立てや搬送領域などにおいても利用が定着してきている。加えて、製造業業種の中でも、以前からロボット活用が盛んだった自動車関連や電機関連などに加え、三品業界(食品、医薬品、化粧品)などでも活用が広がってきている。

 市場そのものが大きく広がる中で、課題となってきているのが「ロボットに関連する負荷」である。ロボットは汎用品であるために「半完成品」とされ、製造現場で使用するためには、設置や設定、プログラミングなどのインテグレーションが必要となる。加えて、ロボットの台数が増えれば増えるほど、製造現場におけるメンテナンスのための負荷も増えている。ロボットの活用を広げるためにはこうした負荷を低減することが必須というわけだ。

 こうした課題を解決するためにロボットメーカーであるデンソーウェーブが新たに開始したのがロボット活用プラットフォーム「DENSO Robotics Cloud」である。DENSO Robotics Cloudの狙いと取り組む意義について、デンソーウェーブ ソリューションビジネス推進部 商品企画室 室長の榎本聡文氏に話を聞いた。

ロボットの保全や実装の負荷を軽減

 デンソーウェーブは、産業用ロボットの他、バーコードやQRコード、RFIDなどの自動認識機器を展開するリーディングカンパニーの1つである。同社が2020年10月1日から提供を開始したのが、産業用ロボットの導入から運用、保守までをトータルでサポートするクラウド活用型プラットフォーム「DENSO Robotics Cloud」だ。その背景には、ロボットが使われる過酷な環境があるという。

photo デンソーウェーブ ソリューションビジネス推進部 商品企画室 室長の榎本聡文氏

 榎本氏は「ロボットは可動部のある精密機械ですが、使用される環境は、オイルミストの中だったり、高温環境だったり、切削油にまみれたりするなど、過酷な環境で使用されることも少なくありません。これらの厳しい条件でも安定した稼働維持するために、メンテナンス(保全)に大きな注意が必要になります。また、製品のライフタイムも保全活動によって左右されます。これらを総合的にサポートする必要があると考えました」とDENSO Robotics Cloud開発の背景について述べている。

 DENSO Robotics Cloudは、産業用ロボットとクラウドサーバを安全なネットワークで接続し、多様なロボット活用シーンにおいて最適なサポートを提供するものだ。「導入前検証」「トレーニング」「設置」「設備立ち上げ」「稼働」「トラブル対応」「定期メンテナンス」という産業用ロボットの一連のライフサイクルとトータルでサポートできる点が特徴である。ロボットの導入・運用・保守にかかる工数や時間を削減することが期待されている。

 「導入前の検証からトレーニング、開梱・設置、設備立ち上げ、稼働、トラブル対応、定期メンテナンスに至るまで、ロボットライフタイム全般にまたがるサポートを集約したプラットフォームをコンセプトとしています」と榎本氏は訴求する。

photo DENSO Robotics Cloudのコンセプト(クリックで拡大)出典:デンソーウェーブ

「備えをする」「原因を見つける」「復旧と対策に時間をかけない」

 DENSO Robotics Cloudは、「ベーシックサポート」と「オプショナルサポート」の2つのメニューを用意している。榎本氏は「ベーシックサポートは、突然のトラブル発生時のダウンタイムを最小限に抑えるため、『備えをする』『原因をいち早く見つける』『復旧と対策に時間をかけない』を目的とした機能を提供しています」と語る。

 「備えをする」については、例えば自動バックアップ機能がある。ロボットのデータを状況に応じて自動的にバックアップすることで、異常発生時にクラウドを介してバックアップデータをサービスエンジニアと共有し、原因特定までの時間を短縮する。「原因をいち早く見つける」については、ロボットから離れた場所でもWebブラウザを介して稼働状況を確認し、異常発生時にはPCやスマートフォンなどのデバイスに通知する機能を提供している。

 そして「復旧と対策に時間をかけない」については、ロボットに異常が発生した際にサービスエンジニアがリモートで状態を確認しながら顧客とやりとりし、スピーディーな問題解決をサポートする。また、修理が必要と判断された場合には代替品の貸し出しを提案する。代替品には前述の自動バックアップ機能で取得した異常発生直前のデータをあらかじめリストアした上で届けることも可能なため、顧客はロボットを載せ替えるだけですぐに生産を再開することができる。

 またオプションサポートでは、必要に応じて機能を追加できるようになる。例えば「高セキュリティの本人認証」「納品物確認」「開梱時の納品物チェック」「QRコードでのマニュアル呼び出し」「稼働データ分析・異常検知」「トラブル解析機能」「メンテナンスを簡単予約」「サービスエンジニア呼び出し」など、さまざまな機能の展開を計画している。また、さらなる安心・利便性を提供する機能の準備も進めており、現在も拡大中だという。

photo DENSO Robotics Cloudの機能(クリックで拡大)出典:デンソーウェーブ

運用基盤にMicrosoft Azureを選んだ3つの理由

 このように、柔軟性の高いシステムを構築できた理由として、マイクロソフトのクラウド基盤「Microsoft Azure」の存在がある。DENSO Robotics Cloudは、産業用ロボットの情報をエッジコンピューティング用PCで収集し、これらをSIM搭載のネットワークルーターでクラウドに集約するというシステム構成となっている。1台のルーター当たり最大で65台のロボットの情報を集約することが可能となる。このクラウド基盤としてMicrosoft Azureを採用しているのである。

 Microsoft AzureがDENSO Robotics Cloudにもたらしたものは、主に3つあるという。1つ目は「セキュリティ」だ。工場内のネットワーク上では生産データなど非常に機密性の高いデータも運用しており、情報漏えいを防止するためにセキュリティは最上位の条件となる。

 「Microsoft Azureは多層防御の仕組みを備え、さらに全世界のセキュリティエキスパートが常に最新情報を入手して対策を施しています。数あるクラウドの中でも安全性は非常に高いと判断しました。また、ISO 27001(ISMS認証)やCenter for Internet Security(CIS)ベンチマーク、NIST CSF(Cybersecurity Framework)など、国際的なセキュリティ規格やガイドラインに準拠しており、将来的にDENSO Robotics Cloudのグローバル展開を進める上でも強力な武器になると考えました」(榎本氏)

 2つ目は「システム構築の容易性」である。産業用ロボットの膨大なリアルタイムデータを活用するシステムを短期間で構築するのは難しい。DENSO Robotics Cloudでは、IoTデバイスとの双方向のデータ通信を担う「Azure IoT Hub」、あらゆるデータを管理する「Azure SQL Database」、システム全体を管理する「Azure Portal」、画像やドキュメントを保存する「Azure Blob Storage」、Webアプリケーションを開発する「Web Apps」など、Microsoft Azureの多彩なPaaSを組み合わせることで、より容易に高度なシステム構築を実現している。「この効果は絶大で、1年未満の短期間でのシステム構築を実現することができました」(榎本氏)。

 そして3つ目が「拡張性」である。これは、主に今後の新たなサービス展開に大きな利点をもたらす。「例えば、ロボットコントローラーやエッジPCのOSはWindowsとなります。Microsoftのアーキテクチャに基づいて一貫して構築することが可能であり、DENSO Robotics Cloudの新たな付加価値をタイムリーに提供していくことができます」(榎本氏)。

photo DENSO Robotics Cloudを支える技術(クリックで拡大)出典:デンソーウェーブ

AIを活用した故障予知サービスを検討

 これらの発展性や拡張性を生かし、DENSO Robotics Cloudでは、さまざまなサービスを随時広げていく方針である。オプショナルサポートとして早期に提供することを目指しているのが、AIを活用した故障予測だ。IoTを活用した故障予測サービスは増えているものの、ロボットのように生産ラインの要を支える装置の場合、大きな問題となるのが予測精度である。例えば「1年以内に故障する可能性が高い」といった精度でしか予測できないのであれば、顧客はロボットを限界まで使いたいとの思いから、その時点でロボットを交換することはしないため、予測に意味はなくなってしまう。

 この『ロボットを限界まで使いたい』と考えるニーズに応えるためにも、故障予測精度の向上にAIを活用することを考えています。Microsoft Azureの機能などを組み合わせ、早期にサービス提供を行えるようにしたいと考えています」と榎本氏は語っている。

 また、デンソーウェーブが開発したQRコードなどを生かし、BHT(バーコードハンディターミナル)と連携した、さまざまなサービスツールを拡充していく計画も進めている。例えば、同社はBHT上でQRコードを用いた「顔認証なりすまし防止ソリューション」を2018年より提供しているが、これをDENSO Robotics Cloudに組み込むことで、あらかじめ許可された者のみのログイン権限を徹底することが可能となる。同様にQRコードリーダーとしての機能を活用した開梱時の品番チェック、マニュアルの検索と閲覧、メンテナンスやスクールの簡単予約といったサービスも検討中だ。さらに、マイクロソフトのMRグラス「HoloLens」を利用したリモートメンテナンス支援サービスをDENSO Robotics Cloudから展開していく構想もある。

 「ベテランのサービスエンジニアはあらゆる企業で減少傾向にあり、その知識や経験を最大限に活用するため、若手のサービスエンジニアをリモートから支援するといった利用を考えています。若手のサービスエンジニアがHoloLensに映しだした現場のロボットの状況を本部に伝え、それを見ながら熟練サービスエンジニアが的確なアドバイスを返すというものです。社内的に利用するだけでなく、顧客の保全担当者にも同じサービスを提供することで、メンテナンスのスキルアップにも活用いただけますと榎本氏は語っている。

ロボットの使用環境を拡大へ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、製造現場による人手作業はさらに制限され、ロボットの活躍の場は従来以上に増える見込みだ。しかし、ロボット導入に関連する労働集約的な負荷を軽減し、より容易に使える環境を構築しなければ「ロボットを導入したくてもできない」というのが製造現場の本音である。デンソーウェーブのDENSO Robotics Cloudは、こうした環境への1つの挑戦であるといえる。

 榎本氏は「特にこれからのロボット活用は、柔軟物や認識しにくいものなど、ロボットにとって高難度の領域でいかに広げていくかがポイントとなっています。『DENSO Robotics Cloud』で総合的に支援することで、導入を加速させていきたいと考えています」と語っている。

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アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2021年3月14日