長期での顧客観察から得られる情報は、マーケティングにおける「企業にとっての優良顧客の定義決め、その顧客像が求める成功体験の内容、アプローチ方法」、また、セールスにおける「顧客LTV増加をもたらす活動の特徴抽出、顧客側感度」などの点で、彼らが気づいていない新たな示唆を与えることができます(図8)。
とはいえ現実には、既に確立されている個々の業務に対し、「顧客の成功体験が大事」と言葉だけ振りかざしても、そう単純にやり方が変わるものではありません。目の前の顧客から学習して、さまざまな業務オペレーションや人をつなぎ成長し続けるということは、企業のトップダウンでの戦略的推進無くしては実現できないと筆者は考えます。第1回で紹介したシーメンスのグローバル顧客パートナー支援チームは、「プリセールス、サービス、カスタマーサクセス、マーケティング、サポートのスタッフを擁して連携することで、カスタマーサクセスを成功させる」と述べています。
米国の大手ソフトウェア会社による調査結果によると、事業が成功している企業は他企業に比べ、カスタマーサクセスを非常に重要だと捉えている割合は70%にものぼり、この割合はその他の一般企業より21%も高いと示されています(図9)。カスタマーサクセスへの取り組むということは、企業の経営戦略そのものに深くかかわるものといえるのではないか、と筆者は考えます。
最後に、第2回の内容をまとめると、以下のようになるでしょう。
次回は、実際に、このカスタマーサクセス2.0のアプローチを実践している企業事例を取り上げて、考察を進めていきます。
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